元々は犬派だったけど…初代猫ペンちゃんとの出会いは友人を介して

　実は私、元々は犬派なんです。私が3歳の時、父が「竜姫号」という血統書付きの秋田犬の女の子をいただいたので、家族で“リュウ子”と呼んでかわいがっていました。だから、私は物心ついた時から犬と一緒。

　最初は家の中で飼っていたので、まるできょうだいみたいな感じ。冬の寝床には兄、私、リュウ子の順に、母がアンカ（小型の暖防具）を並べてくれたりしていました。最後の数年は家の事情で飼えなくなり、父方の伯父の家に預けていたので、寂しくて何度も会いにいきました。

　犬を飼いたいとはずっと思っていますが、私の生活事情となかなか合わなくて飼えません。不規則な私の生活では毎日の散歩が無理だし、家を空けることもとても多いので。

　猫との出会いは、20歳で正式デビューをして実家を出てから2年ほどした頃。ある友人に会ったら、まるで胸のブローチみたいに子猫をチョンと抱いていたんです。「今日、初めて母猫と離してみたの。どう？　飼わない？」と言って。あまりにかわいくて引き取らせてもらい、最初は人に聞いたり本を読んだりして、飼い方をずいぶんと勉強しましたね。

　その子はメスの三毛猫だったのですが、ペルシャ猫の血が4分の1入っていたので、「山田ペルシャ」と名付けて「ペンちゃん」と呼んでいました。今飼っている2匹は抱っこが嫌いなのに、ペンちゃんは抱っこもおんぶもさせてくれましたね。自転車のカゴに入れて一緒にお散歩したり、クラブや事務所に連れていったりも。

　家では、私がお風呂に入っているとバスタブのフチにのってお湯をかき混ぜたり、原稿を書いていると原稿用紙にどっかり座ったり。それはそれで困るのですが、つい笑ってブレイクを入れることができていいんですよ。寝る時は、私のお布団の中に潜り込んでいました。

つらい時期に寄り添ってくれたペンちゃん　大往生の後はペットロスにも

　当時の私はものすごく忙しかったので、ペンちゃんには寂しい思いをいっぱいさせてしまったと思います。でも、私が暗い顔をしていると、そばに来て寄り添ってくれました。

　ある時、あまりの忙しさにつらくなり、警察に「死にたい」と電話したことがあったんです。電話口の向こうから「そばに誰かいますか？」と聞かれ「猫がいます」と答えたら、「猫じゃダメですね」と言われましたが……ペンちゃんがいなかったらどうなっていたか。まったく違う生き物なのに、分かって寄り添ってくれた。不思議ですよね。癒やし系の猫でした。

　ペンちゃんとは長く1対1で暮らしてきたから、結婚して夫が来た時はご機嫌斜めでしたね。夫が階段を先に上っただけで「シャーッ」と怒って、前足で叩いちゃう。

　そんなペンちゃんは、おいでくんが来る約10年前に22歳で大往生。その時は悲しすぎて。もういないのに、今そこを横切った気がしたり、もう抱っこできないんだ……と思うとその感触が恋しくて、猫を飼う友人宅に行って抱っこをさせてもらったりしました。ペンちゃんには私しかいなかったから、私も誰が亡くなった時よりも悲しかったというのが、正直な気持ちです。

　ペットロスを癒やしてくれたのは時間。どんなに仕事が忙しくても「気持ちが紛れた」ということはありませんでした。今でも「ありがとう」の気持ちとともに、確実に心の中で生きています。

（中野 裕子）