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ごぼうの正しいアク抜きとは? 栄養を逃さない下ごしらえを栄養士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

日本の家庭料理「きんぴらごぼう」(写真はイメージ)【写真:写真AC】
日本の家庭料理「きんぴらごぼう」(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 特徴的な風味を持つごぼう。キク科の植物で細いトゲのある花を咲かせますが、私たちが食べているのは根の部分です。古くから食用としてきた国や地域は珍しく、さまざまな料理に使用されるのは日本特有の食文化だといわれています。市場にはほぼ一年中出回りますが、旬は今の時期。その栄養価やアク抜きのコツなどを栄養士の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

    目次

  1. 「縁起物」としても日本の食文化に欠かせない食材
  2. 食物繊維がたっぷり ごぼうの栄養価
  3. アク抜きのコツ 香りや旨味は皮に
  4. 新鮮なものの選び方 部位によって違う味わい
  5. 栄養素やアク抜きのコツを知ってごぼうを味わいましょう

「縁起物」としても日本の食文化に欠かせない食材

晴れの日の食材としても使われてきたごぼう(写真はイメージ)【写真:写真AC】
晴れの日の食材としても使われてきたごぼう(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ごぼうは平安時代の頃、中国から薬草として日本に伝来したとみられています。そうして日本でも、江戸時代には各地で栽培されて食べられていました。

 世界的にごぼうはハーブや漢方など薬草として用いられることが多いのですが、古くからその根の部分を野菜としてさまざまな料理に用いてきたのは、日本特有の食文化といえます。最近では健康志向の関心の高まりからアジアの一部で食べられるようになり、欧米でもヘルシーな野菜として注目を集めているそうです。

 きんぴらごぼうなど日本の家庭料理には欠かせない存在です。江戸の庶民の味とされていたドジョウの「柳川鍋」にもごぼうが使われています。土の中に長く根を張ることから「土台を固めて代々長く幸せに」との意味を込めて、縁起物としておせち料理にも。また、たたきや煮しめなど、晴れの日の食材としても使われてきました。

「大浦ごぼう」は毎年、成田山の新勝寺に奉納されることで知られています。千葉県匝瑳市の大浦地区で栽培され、直径は最大で30センチ、長さは1メートルにもなる巨大なごぼうです。精進料理の縁起物として煮付けが有名です。

食物繊維がたっぷり ごぼうの栄養価

食物繊維がたっぷりのごぼう(写真はイメージ)【写真:写真AC】
食物繊維がたっぷりのごぼう(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ごぼうといえば、食物繊維がたっぷりな食材として知られていますよね。日本食品成分表2020年版(八訂)によると、100グラムあたりの食物繊維は5.7グラムです。

 そのうちの2.3グラムは「イヌリン」と呼ばれる水溶性食物繊維。血糖値の上昇をゆるやかにする作用が注目されています。また「セルロース」や「リグニン」と呼ばれる不溶性食物繊維も3.4グラム含まれ、整腸作用や動脈硬化の予防に期待されています。

 水分量は81.7グラムと多めな一方、エネルギー量は58キロカロリーと低め。「カリウム」「カルシウム」「マグネシウム」などのミネラルも比較的豊富な野菜です。

アク抜きのコツ 香りや旨味は皮に

香りや旨味は皮に(写真はイメージ)【写真:写真AC】
香りや旨味は皮に(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ごぼうを水にさらした時に出る色は「ポリフェノール」。アク抜きは、栄養成分や風味を損なわないという観点では、特に必要はないように思います。白く仕上げたい場合は酢水に浸しますが、15分以上浸すと硬くなるので注意が必要です。

 香りや旨味は皮に多く含まれています。皮は「サポニン」という成分が豊富で強い抗酸化作用があるので、こそげ落とす程度にしましょう。泥などの汚れはたわしなどでこすって落とします。アルミホイルを丸めて使うと手軽です。包丁のみね部分でこそげ落としても良いでしょう。

新鮮なものの選び方 部位によって違う味わい

部位によっても味わいが異なるごぼう(写真はイメージ)【写真:写真AC】
部位によっても味わいが異なるごぼう(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ごぼうは乾燥しやすい野菜です。一般的に泥付きのものは風味が良く、新鮮とされています。店頭で洗ってあるものを見かけた際は次の点を参考に選びたいところです。

新鮮なごぼうの見分け方

  1. 表面
    ヒゲ根が少なく、ハリがあるもの
  2. 硬さ
    硬く締まっているもの
  3. 切り口
    空洞がないもの

 また、部位によって硬さや味わいが異なります。適した料理にも微妙な違いが。

 ・細い先端部分:水分が多くやわらかい食感。香りが少ないのでサラダやきんぴらごぼうに
 ・太い上の部分:繊維が多く水分が少ないため硬い食感。香りが高く、煮物や炊き込みごはんなど加熱時間が長い料理に

栄養素やアク抜きのコツを知ってごぼうを味わいましょう

きんぴらも切り方ひとつで新しい味わいに(写真はイメージ)【写真:写真AC】
きんぴらも切り方ひとつで新しい味わいに(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 日本独自の食文化を代表するごぼう。食物繊維をたっぷり含んでいるだけでなく、カリウムやマグネシウムなどミネラルも豊富な野菜です。また、切り方によって風味や歯ごたえが大きく変わります。定番のきんぴらも、切り方を変えるだけで、新しい味わいを楽しめるはず。保存方法に気をつければ長期間保存することができ、さまざまな料理にも使用できるので、常備野菜としても便利ですね。この機会に深く知って、おいしさをより楽しんでみましょう。

【参考】日本食品標準成分表2020年版(八訂)(文部科学省)

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾