仕事・人生
部屋を解約してバスで全国へ…人手不足の地域と旅人を結ぶ「おてつたび」が生まれるまで
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「生きる」中で感じることや苦悩は、どのような立場でも存在しています。そこで、さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、それぞれの人生を紐解くのがこの連載「私のビハインドストーリー」。今回は、地域と旅行者をつなぐ話題のプラットフォーム「おてつたび」を立ち上げた永岡里菜さんが登場です。どんな思いからサービスをスタートさせたのか、その経緯などについて伺った前編をお届けします。
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「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた造語「おてつたび」
「おてつたび」とは、「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた造語。収穫時の農業やハイシーズンの旅館など季節的な短期の人手不足で困っている地域と、いろんな地域に行ってみたい旅行者を結びつけるWEB上のマッチングサービスです。
このサービスを立ち上げた永岡里菜さんは、「地域の方がこういうことに困っているよ、この期間で手を貸してほしい、といった情報を自由に出せるようになっていて、それを見た参加者(旅行者)の方が申し込む形でマッチングが成立する仕組みになっています」と説明します。
利用の流れはシンプルです。人手不足で困っている地域側は、まずサイトに問い合わせ、サービスの説明や理念に納得いただいた上でアカウントを開設。以後はこのアカウントを使って、自由に募集を掲載します。
一方、参加者は18歳以上(高校生を除く)であれば、どなたでも登録できます。お手伝いに参加する際は、本人確認用書類の提出が必須。自己PRなど必要項目も記入して申し込むのが特徴です。
「おてつたび」が “人へのサポート”を大切にしている理由とは
アルバイト採用時の面接に相当するものは基本的にありません。マッチング後、実際の参加前に「おてつたび」側からオンラインで事前説明をする程度。それは「新しいサービスなので不安の払拭やビジョンを伝えるため」だと永岡さんは言います。
参加者にとっては受け入れ先がどんなところなのか、受け入れる側にとってもどんな人が来るのか不安なものです。
「そこはまさしく創業当時からめちゃくちゃ指摘されたことです。ですが、それがあるがゆえに地域間の人材シェアリングができていない現状があります。地域の方は親戚や地元の知人だけで頑張るしかなく、過疎化が進んだ地域では打つ手がなくなってしまっている。逆に都市部に住んでいる若者は地域に興味があっても、アクセスする場所がない。それらを解消していく必要性を前提として『おてつたび』を設立し、運営しています」
そんな運営理念の中で永岡さんが大切にしていることは「人へのサポート」。不安要素を少しでも排除できるように、「マッチングの前後で手厚いサポートを行うことが重要」だと考えています。
「日本全体の人口が減っているので、この先も地方で人が減っていくのは分かっています。産業が縮小しないためには、外部の人を頼ることにチャレンジしていかなければいけないと思っていますから、その『怖い』という気持ちに寄り添いたい。そして地方の方々には、一歩踏み出す勇気を持ってもらいつつ、ちょっとずつ慣れていって自走してもらいたい。そのため、丁寧に説明しながら不安に寄り添っていけるよう、サポートさせていただいています」
そうやって地道に地域との関係性をコツコツと積み重ねていった結果、「永岡さんがそう言うなら」と受け入れた地域の方もいるそう。永岡さんは身の引き締まる思いだと語ります。
「今では『おてつたびさんが言うなら』と言ってもらえるようになってきました。少しずつ信頼を積み重ねられるようになってきたので、その信頼を裏切らないように私たちももっとサービスをブラッシュアップしていく必要があります」