仕事・人生
部屋を解約してバスで全国へ…人手不足の地域と旅人を結ぶ「おてつたび」が生まれるまで
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住んでいた部屋を解約 夜行バスで日本全国の地域を巡る旅へ
永岡さんの出身は、漁業と林業の街として知られる三重県尾鷲市。東京からは車で約6時間、大阪からは紀伊半島をぐるっと回らなければ辿り着けない場所で生まれ育ちました。
「いいものもたくさんある、と私自身は思っていますが、『どこ、そこ?』と言われたり、分かりやすい観光名所もないので尾鷲にわざわざ観光には来たりはしないわけです。でも、そういった地域って全国にたくさんあって、人が来る仕組みを作っていけばいいのではないかと思ったんです」
それが、永岡さんが『おてつたび』を立ち上げた原点です。
永岡さんは進学先として千葉大学教育学部を選びました。当時は消去法で「小学校の先生になりたい」と思っていたからだそう。ただ、「自分の中で迷いもあったので総合大学に行くと決めた」と話します。
しかし、教育実習を経験した際に「やはり一度は社会に出てみないと子どもたちに伝えられることは少ないんじゃないか」と考え、「社会経験を3年積む」と決めて就職。今度はいろいろなことに挑戦できるベンチャー企業を選びました。
「自分の人生を何に使いたいのか」と考える中、地域や一次産業をサポートする会社に転職。そこで地元・尾鷲のような場所が日本にはたくさんあることを知りました。さらには地域の方を通してその土地の魅力も知ることができると実感したのだそう。
ただ、普通の旅行ではそういったきっかけを持つことができません。どうしたらいいのか分からないまま、思いだけが募る日々。また、会社員として働くことを言い訳に、自分の「やりたい」という思いから逃げてしまっている自分にも気づいてしまいます。
「このままだと多分、一生やらないな」……そこで退職を決意。住んでいた部屋を解約し、一次情報を取るために夜行バスで日本全国の地域を巡る旅に出たそうです。
「今だから笑い話になりますが、当時は『こいつは頭おかしいんじゃないか』って思われるのが怖くて、部屋を解約したなんて言えなかったです」と当時を振り返って笑う永岡さん。何が正解なのか分からないまま「何とかしたい」という思いだけを胸に、紹介された地域を訪れては現状を探る日々でした。
「一番模索していたタイミング」を半年ほど経てから、「自分がやりたいことをやっている会社が見つからなかったので、自分でやっていく必要があるのかなと思って」起業を決めました。
2018年7月に起業し、模索しながら4年目。コロナ禍で地域への関心度が高まっている今だからこそ、「『旅行に行く』『どこどこに行く』中の1つの選択肢として『おてつたびに行く』という旅が根付くと本望ですね」と永岡さん。「そこを目指していきたい」と力強く語ってくれました。
千葉大学教育学部を卒業後、ベンチャー企業に就職。次に転職した会社で一次産業や地域の方と接する機会があり、それまで漠然としていた「地域の魅力を伝えたい」という自身の思いに気づく。その後は約半年間、さまざまな地域をめぐりながらアイデアを具体化。ハイシーズンの農業や旅館など季節的な短期の人手不足で困っている地域と、いろんな地域に行ってみたい旅行者を結び付けるマッチングサービス「おてつたび」を立ち上げた。その事業内容は多くのアイデア賞を受賞。ベンチャー企業として地域の課題に真っ向から立ち向かう姿勢と理念は多くの人の共感を呼び、現在では登録者約1万人の人気サービスに成長している。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)