からだ・美容
ストレスやイライラで眠れない…そんな時に“冷やすべき部分”とは 牛乳を飲むなら朝に
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:西谷 綾子
ストレスを感じる瞬間が多い現代社会。「夜に眠れない……」という経験も、決して珍しいものではありません。眠れないという焦りを感じながら、ストレスにつながることをさらに考えてしまい、もっと眠れなくなってしまうこともありますよね。今回もタレントで睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会)でもある西谷綾子さんに、質の良い睡眠を取るコツを教えていただきます。第10回のテーマは「ストレスと睡眠の関係」です。
◇ ◇ ◇
ストレスの原因について考えてみよう
【今回のお悩み】
「職場の人間関係に疲れ、強いストレスを感じる日々です。あまり眠れず、入眠しても眠りが浅いような気がします。睡眠とストレスはどんな関係なのか教えてください。また回避する方法はあるのでしょうか?」(Jさん)
「ストレスで眠れない」という状況になった時、眠れない理由=抱えているストレスと考えがちですが、実は逆なんです。実際は脳がきちんと休めていないため、質の良い睡眠を取れていないことでストレスを感じてしまいます。脳の働きは睡眠と密接に関係しているのです。
睡眠不足の状態は、野生動物でいうところの“捕食されるリスク”が高まっている状態に酷似しています。リスクを感じた脳は敵を察知できるよう、感情を司る扁桃体の働きを活発にして、緊張した状態を作り出します。これと同じような状態が睡眠不足の人にももたらされるため、イライラしやすくなり、普段は聞き流せることなどに対して落ち込んだり、過剰に反応したりしてしまうのです。
扁桃体のすぐ後ろにある海馬は記憶を司ります。海馬は扁桃体で起こった感情を記憶するため、睡眠不足=警戒と記憶してしまうと、似た状態になる度にストレスが募ってくのです。普段から睡眠不足でも頑張ってその日を乗り切っていると、その状態に慣れてしまって睡眠不足の度合いが分からなくなり、とても危険だといえるでしょう。
イライラして眠れない時は脳の温度を下げると効果的
何だかイライラして寝付きにくい、脳が興奮して眠れない……といった時もありますよね。それは、深部体温が高くなっているからという理由もあるようです。脳も内臓の一つですので、深部体温が高くなると寝付きにくくなります。
眠る直前まで仕事をした時や眠る前にスマートフォンを長く見た時、忙しい一日を過ごした時なども、脳は興奮状態になり温度が上がります。それが夜になっても持続し、交感神経が優位になったままになっていることも多いのです。
そういう時は、冷却枕や氷枕で脳をダイレクトに冷やすことで寝付きやすくなることがあります。冷やす場所は耳から上の頭。後頭部や側部、額などです。頭が冷えると考え事ができず、いつの間にか眠っています。寝返りを打つため氷枕が睡眠中に外れてしまっても大丈夫。眠りに入る時、しっかり当てることで深い睡眠に入りやすくなります。
ただし、耳から下は冷やさないこと。目が冴えてしまいますので、冷やす時は耳から上だけがベターです。
牛乳は快眠に効果がある?
映画などで、眠る前に神経をなだめる目的で牛乳を飲むシーンがありますよね。牛乳に含まれる必須アミノ酸「トリプトファン」は、質の良い眠りを促す脳内物質「メラトニン」の原料です。そのため、牛乳には眠りに入りやすくする効果が期待できるでしょう。
ただし、牛乳を飲むなら朝にしてみましょう。摂取したトリプトファンがメラトニンになるまで、時間がかかるからです。朝食時に摂ったトリプトファンはまず、気分を安定させる働きがある「セロトニン」に変化します。日中の心を穏やかにしてくれるため、安定して十分な能力を発揮できるでしょう。その後、セロトニンは脳を眠らせるメラトニンに変わります。
トリプトファンの効果で睡眠の質を高めるには、必要な条件が2つあります。1つ目は、睡眠不足の場合は毎日ほんの5分でも10分でも早寝をして累積睡眠量を増やすこと。2つ目は適度な運動(家事や散歩程度)することです。この2つをセットにしないと、トリプトファンを摂取しても質の良い睡眠にはつながりませんよ。
(関口 裕子)
西谷 綾子(にしたに・あやこ)
1986年4月4日、鳥取県生まれ。小学校3年生からバスケットボールを始め高校時代にはインターハイ・ウィンターカップ3年連続出場。モデルの仕事でランニングと出合い、2009年から本格的なトレーニングを開始。10年に初フルマラソンで完走し、16年の東京マラソンで3時間1分32秒という自己ベストを記録した。怪我をしないランニングライフを推奨した講習会や、睡眠改善インストラクターの資格を生かした「上手に寝て、健康になる」講演会を開催中。