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地域と旅行者を結ぶサービス「おてつたび」 創設者の永岡里菜さんが決めた“覚悟”とは
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旅の新しい形を作る試みとして注目を集めている「おてつたび」。季節的な人手不足に悩む地域と、いろんな地域に行ってみたい旅行者を結び付けるウェブ上のマッチングサービスです。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回は「おてつたび」を立ち上げた永岡里菜さんの後編をお届けします。サービスに込められた思いとは、一体どのようなものだったのでしょうか。
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大学生と社会人の割合は約半分に コロナ禍で利用の仕方にも変化が
2018年に「おてつたび」を立ち上げた永岡里菜さん。「周りに起業している人は誰もいなかったし、起業自体は身近ではなかった」と語ります。起業は「すごい人がやるものだ」と思っていましたが、実際にやってみると「そうでもなかった」のだとか。
社会人5年目での起業に、金銭面での苦労はなかったのでしょうか。永岡さんは「自分が貯めていたお金と、後は親に頭を下げましたね」と当時を振り返ります。
「ただ、一般的な起業の資金調達方法は現在、すでに多様化しています。アイデアの段階からベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の方に支援してもらっている会社さんも多いでしょうし、またいろんな選択肢があっていいんじゃないかなと思います。
私の場合は、たまたま事業領域が『地域』ということで、対外的にお金の匂いがあまりしなかった状況があります。また、起業初期のまだ事業の形がない段階で外部から資金を入れてしまうと、自分の性格上、外部の方の強い意見に引っ張られて本当にやりたいことができなくなってしまう可能性を感じたので、事業の形がある程度できてから考えようと思っていました」
人手不足に困っている地域と、いろんな地域に行ってみたい旅行者とを結ぶプラットフォームサービス「おてつたび」。設立当初の登録者は、比較的時間に余裕のある大学生の割合が多かったそうですが、コロナ禍で少し事情が変わってきたそうです。
「元々このサービスは大学生をターゲットにしていて、立ち上げ当初の利用者もほとんどが大学生でした。それが口コミで広がり、今ではコロナ禍の影響も相まって大学生と社会人の割合はほぼ半分。登録者数も昨年からは倍増しています。
どうしても若い人の方が割合は多くはなってしまうのですが、それでも最近は60~70代の方や、ゴールデンウィークに40代のご夫婦が利用されることも。お子さんが大きくなって少し時間に余裕が出てきた方が、リモートワークになったので利用されていたりと年齢層は多様化している印象です」
受け入れ先として、今では全国47都道府県すべてを網羅する「おてつたび」。設立当時は永岡さんが1人で運営していたため、受け入れ先の開拓も1人で行っていたそうです。「呼ばれたらとりあえず地域へ行って説明させていただき、興味を持っていただいたら一度は試させていただいて。そうやって一つひとつ信頼関係を蓄積していった結果、今に至ったと思っています」と当時を振り返ります。
「やはり最初の1年は、1人でやる限界をすごく感じた1年でしたね。ちょこちょこお手伝いしてくださるボランティアのような形で手伝ってくださったり、途中からインターンや『おてつたび』を利用された方が手伝ってくださったりしましたが、最初の社員が入社したのが創業して1年後くらい。それまではフルコミットは私1人で、ほぼ睡眠時間もないような状態でした」