仕事・人生
地域と旅行者を結ぶサービス「おてつたび」 創設者の永岡里菜さんが決めた“覚悟”とは
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お手伝いには雪かきや撒割りといった変わり種も!?
コロナ禍による緊急事態宣言下では「移動が難しくなってしまったことや先が見えなったこともあり、利用者が一時期的に落ち込んだ」と永岡さん。しかし「コロナ禍でも人手不足がなくならない産業はたくさんありますし、技能実習生が来日できなくなったことで、地域の方からの相談は逆に増えた」とも語ります。
受け入れ先のお手伝い内容は、一次産業が4割、観光業が4割、それ以外が2割という内訳。それ以外の中には酒造業やイルカパークでのお手伝い、雪かき、薪割りなど、ちょっとユニークな変わり種もあるそうです。
多くのメディアでも取り上げられ、知名度もグンと上がっている「おてつたび」ですが、今後の展望をどのように見ているのでしょうか。永岡さんは「より地域に根差したものが増えてくれるとうれしい」と語ります。
「例えば、最近では六次産業をしているような方が登録してくださることも。地域の方にとっては当たり前の日常で、人が足りないところで、『おてつたび』をうまく使えるようなものが増えたらうれしいなと思っています。
逆に参加者側の視点で考えると、行ける地域の選択肢をもっと増やしていきたい。今夏に47都道府県を達成できたのですが、その一方で日本には1741の自治体があるんです。集落単位でいうとこの3~4倍はあると思っているので、まだまだ足りていないと感じています。もっともっといろんな地域の方に使ってもらえるようなサービスにしたいですね」
その言葉通り「おてつたび」は、JA(農業協同組合)やANAトラベラーズ、JTB、岐阜県、佐賀県など、多くの企業や地方自治体とのコラボ企画を次々と実施しています。
永岡さんは「大きな課題が複雑に絡み合っている難問を解くことが、1人や1社でできるとは一切考えていません」と語ります。「地域がこれからも存続し続けられるような世界を作っていくために、いろんな会社の強みをお互いに生かす必要があるんじゃないか」と。
そう考えているからこそ、創業当時、「株式会社としてのビジネスとソーシャルインパクトを必ず両立した会社でやっていこう。ビジネスとしてしっかりと継続し、世の中の仕組みの一つにしたい」と覚悟を決めたといいます。
その強い思いは、マンションの一室にある会社の壁に立てかけられたホワイトボードにしっかりと刻まれていました。
「インフラになる!」
「まだまだ通過点にすぎない」と語る永岡さんと「おてつたび」の旅は、同じ志を持つ仲間たちとともに地域の課題解決に向けて、今日も地域と旅行者をつないでいるのです。
千葉大学教育学部を卒業後、ベンチャー企業に就職。次に転職した会社で一次産業や地域の方と接する機会があり、それまで漠然としていた「地域の魅力を伝えたい」という自身の思いに気付く。その後は約半年間、さまざまな地域をめぐりながらアイデアを具体化。ハイシーズンの農業や旅館など季節的な短期の人手不足で困っている地域と、いろんな地域に行ってみたい旅行者を結び付けるマッチングサービス「おてつたび」を立ち上げた。その事業内容は多くのアイデア賞を受賞。ベンチャー企業として地域の課題に真っ向から立ち向かう姿勢と理念は多くの人の共感を呼び、現在では登録者約1万人の人気サービスに成長している。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)