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「ほのかな甘みが何とも幸せ」 香港の有名豆乳飲料 日本で初輸入した女性の強い思い
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本社もびっくり!? 「それこそ製法まで聞く勢い」で連絡の日々
とはいえ、「ビタソイ」を日本で初めて輸入販売するまでの道のりは、なかなかハードだったそう。桑原さんは香港在住時にブラジリアン柔術を習っており、その縁があって10年前に日本で就職しました。当時から日本文化に興味があったため日本語を習っており、来日後に日本人男性と結婚したこともあって言葉に困ることはありません。それでも、日本の輸入品に関する規制をクリアするには「学生並みの勉強」が必要だったそうです。
「日本は衛生面に厳しいため、輸入食料品に関する規制も同じなんです。成分はもちろん、加熱消毒の方法なども書面で提出しました。そのために香港の『維他ナイ』本社に何度も連絡をして、それこそ製法まで聞く勢いだったんですよ(笑)」
「維他ナイ」は1940年の戦時中、実業家の羅桂祥氏によって設立されました。当時は労働者に牛乳を購入する余裕がなかったため、「栄養補給ができる豆乳飲料を」と考えたのがきっかけだったと伝えられています。現在は海外進出も果たし、米国やオーストラリア、アジア各国など約40か国で販売中です。そうした歴史がありまた規模も大きな企業のため、桑原さんからの「質問」には驚いていたとか。
「企業秘密の部分もありますから、何度で何秒消毒するといった内容は、いきなり質問してすぐに答えてくれるものでもないんですよ(笑)。そこで、『日本ではこういうことを聞かれるからここを答えたい』とじっくり説明して、協力していただきました。『日本はそんなに厳しいのか』って驚いていましたね」
「途中で何度もくじけそうになった」という桑原さんですが、支えてくれたのは「日本で飲みたい!」という一途なファン心、そして香港に対する強い思いです。しかし、「輸入販売を始めたこと自体は決してゴールではない」と続けます。
「日本で起業して、新しい商品を輸入して……と聞いた人は、皆さん『すごいね』とおっしゃいます。でも、興したビジネスが成功してこそですよね。かなりしんどい思いをしていますが(笑)、これからは『ビタソイ』の知名度向上の活動やもっといろんな仕掛けを考えていく必要があります」
日本では現在、香港からの移住者も急増しているそう。そうした人たちと日本社会を結び付けるような役目も、桑原さんの視野に入っています。海外出身者が日本で起業するケースは、今後もますます増えていくことでしょう。そうした人たちが運んでくれる海外文化や味は、日本の食生活をもっと豊かにしてくれそうですね。
(Hint-Pot編集部)