インタビュー

人を信用できるように…短期移住ドキュメンタリーの女性監督 東京を離れて得たものは

著者:関口 裕子

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俳優として活躍する國武綾さん【写真:関口裕子】
俳優として活躍する國武綾さん【写真:関口裕子】

 奄美群島の加計呂麻(かけろま)島に期間限定で移住した人気イラストレーター、ちゃずさん。その生活を追ったドキュメンタリー映画『夫とちょっと離れて島暮らし』が年末から公開されます。監督は『恋の渦』『サッドティー』など俳優として活躍する國武綾(くにたけ・あや)さん。ちゃずさんの件を知ると即座に企画を立てて出演をオファーし、承諾後はすぐに加計呂麻島へと旅立ったのだそう。そして現在は、夫で映画監督の中川究矢さんと奄美大島に移住しています。そんな國武監督に、奄美で暮らすことの魅力、映画を監督したきっかけなどについて話を伺いました。

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撮影を考えてから島へ行くまでを即座に完了

 ちゃずさんの期間限定移住を映画にしたいと思ったのは、連ドラの撮影で何となくフラストレーションを溜めていた時です。その頃に控室で読んでいた、建築家で作家の坂口恭平さんの本に刺激を受け、自分でも何か作ってみたいと思っていました。何となく俳優しかやれないと思い込んでいたんですが、何でもやってみた方がいいんじゃないかなと。

 そんな時、ちゃずさんのインスタグラムをチェックしたら「あと2か月で島を出ます」と書かれていて「これだ!」と。加計呂麻島にいる間に撮影させていただかなければと思い立ち、カメラを持って旅立ったんです。元々、移住したいと思うほど奄美が大好きだったし、横を見たら映画のプロの夫がいた。一緒に来てもらえば何とかなると、映画が撮れる気になっていきました。

 やろうと思ってから島に行くまでの日数は4、5日くらいです(笑)。企画書を書いて、アルバイト先のバーのオーナーさんにプレゼンしたら30万円の現場費を出してくださった。ちゃずさんにDMを送ってOKが出て、夫の予定が空いていたこともあって、2020年の2月21日に加計呂麻島へ向かいました。

“撮影慣れ”していた地元の人たちに助けられて

 ちゃずさんと初めてお目にかかったのは「お食事処もっか」。加計呂麻島でのちゃずさんの仕事のパートナー(創作活動全般のマネジメントを行っていた)マムさんの夫・ヘイ兄さんがやっているお店でした。

ドキュメンタリー映画の“主役”は人気イラストレーターのちゃずさん(c)映画「夫とちょっと離れて島暮らし」製作委員会
ドキュメンタリー映画の“主役”は人気イラストレーターのちゃずさん(c)映画「夫とちょっと離れて島暮らし」製作委員会

 マムさん、ヘイ兄さんも5年前に集落に移住された方。集落でどのような姿勢でいるのが良いのかをおふたりの振る舞い(態度)を見て学んだというのはありました。

 でも、集落の皆さんは思ったよりずっと寛容というか、撮影慣れをされていた。西阿室(にしあむろ)集落の方々が観光用にエサやりをしている大ウナギの取材でメディアが入ったり、ちゃずさんの取材でテレビカメラが来ていたりと慣れていらっしゃったんです。

 また「ちゃずさんを追っているんです」と言うことで信用していただけた部分はありました。「ちゃずみたいなやつがもう1人来た」って(笑)。それと、ちゃずさんが集落の方1人ずつに、「今こういう人が来ています」って話してくださったのも大きかった。そんなこともあり比較的すんなり入っていくことができました。

 当初、2020年4月に東京へ戻る予定と聞き、ちゃずさんが島を出る部分を撮らせていただこうと撮影を始めました。でも、新型コロナウイルスの影響で、ちゃずさんは滞在を延長。東京に戻った私たちは再訪問ができなくなり、それまで撮った素材で完成させざるを得ない状況になりました。そんな時、集落の皆さんがちゃずさんを撮影した動画を送ってくれたんです。本当にありがたかった。だから、映画の最後の辺りは集落の方が撮影した映像です。

 奄美ファンの方々に言われたように、奄美の観光名所っぽいところはほとんど使っていません。もちろん人々を魅了する観光地はあるし、そこも大好きなんですが、何より衝撃を受けた“集落の暮らし”を基準に作りたかった。ちゃずさんがこの集落でどう生活したか、奄美に来たことで何が起きたかをそのまま映画にしたかったんです。プロはしないことかもしれませんが、私はアマチュアなので文字通りそのまま切り取ってお見せしようと。