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加トちゃんに「死ぬのは出発」と言われ…妻の加藤綾菜さん 結婚10周年で考えた生と死

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

結婚10年目を記念して那須高原のグランピングへ

結婚10周年の記念に行ったグランピング中の一枚【写真提供:加藤綾菜】
結婚10周年の記念に行ったグランピング中の一枚【写真提供:加藤綾菜】

 結婚10周年のお祝いは、栃木県の那須へグランピングに出かけました。コロナ禍が落ち着いていれば沖縄旅行でも……と思っていたのですが、なかなか落ち着かないまま。でも、何か記念になることをしようということになり、初のグランピングに出かけたんです。せっかくなので、加トちゃんの大親友である井上順さんもお誘いし、3人で2泊3日の旅になりました。

 焚き火をしながら夜空を見上げたり、映画を観たり、のんびり食事をしたり、温泉に入ったり。井上順さんともさまざまなお話をして。人生の大先輩である加トちゃんと井上さんの素晴らしさを改めて感じました。

 考えてみると……この10年、加トちゃんっていつも笑顔でいてくれたんです。ほんの少しのケンカをしたこともありますが、振り返ってみると思い出すのは笑顔ばかり。加トちゃんの奥さんになって、本当に本当に良かったです。

「死ぬことは次への出発。悲しまなくていい」

 これからの10年……そう考えたら、確実にこれまでの10年よりもいろいろあるだろうな、と思っています。何しろ夫である加トちゃんは、今年で79歳。あと11年経ったら90代になってしまうんです。加トちゃんが「幸せだった」と言ってくれるように、妻としてできる限りのサポートをしていきたいと思っています。

 ただいろいろな方とお話しして学んでいく過程で、サポートの仕方に対する考えも大きく変化していきました。以前は加トちゃんが要介護になったら、仕事を辞めて、加トちゃんのことを自宅で看ようと思っていたんです。すべてを捧げて、自分1人でやらなきゃいけないものだと思い込んでいたんですね。

 でも、そういった感覚が大きく変わりました。阿川佐和子さんと対談させていただいて、自宅での介護と施設での介護、どちらにも良い点があるのだと知りました。

 だから、腕の良い理学療法士の方や介護のプロの方がいらっしゃる施設に、私が毎日通うという方法もありなんだなと、視野を広げるようになったんです。とはいえ、加トちゃんのことを他人に任せられるかはまだ分からないのですが。でも、自分だけで抱え込むのではなく、周囲を巻き込んで、みんなで良い方向に進んでいった方が、加トちゃんのためになるかも、と思うようになりました。

 また、最期の時について考えていると、難しい問題にも突き当たります。私はどんな状態であっても、加トちゃんに一日でも長く生きていてほしいと、どうしても思ってしまいます。加トちゃんがいなくなったら、頭がおかしくなってしまうと思うんです。

 でも、加トちゃんは「自分で何もできなくなったら死なせてほしい」なんて言うんです。加トちゃんは母を亡くした時のことで、いろいろと悩み苦しんだことを明かしてくれたことがあります。一時は、母の後を追おうとまで思っていたと言っていました。

 でも、母のお葬式の時にお坊さんから「変なことを考えていませんか?」と声をかけられたそうです。そして、「死ぬことは次への出発だから、悲しまなくていい」って教えていただき、思いとどまったと。

 加トちゃんに「死ぬのは出発」と言われて、不思議と納得感や安心感はありました。でもやっぱり、いざその時になったら判断ができるかは自信ありません。生きる、死ぬ、この2つは一生の課題かもしれません。

 加トちゃんは「85歳まで現役でいたい」と言っているので、私は今後もサポートを優先。加トちゃんが楽しく仕事をすることができるように、健康でいられるように、見守ることができる妻であろうと思っています。

※2日17時25分に記事の一部を修正しました。訂正してお詫びします。

(和栗 恵)