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厳しいロックダウンのオランダ 現地在住ライターが伝える現在と政府が見据える未来とは
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政府は“withコロナ”の長期政策を作成中 新たな生活様式が定着する!?
政府は今、新型コロナウイルスに関する長期政策を作成中です。その叩き台と呼べるものが2021年12月23日付の全国紙「デ・テレフラーフ」で“リーク”されました。翌日の同紙は、マルク・ルッテ首相の独占インタビューを掲載したので、リーク元はかなり首相と近い筋であるとも考えられます。
この長期政策のキモとなるのが、「コロナと共生し、季節によって行動様式を変えていきましょう」という方針。オランダでコロナは寒い時期に流行っています。ならば、夏は家族や友達が大勢集まるだけでなく、大規模イベントを開催しても大丈夫でしょう。その反面、冬場はこれまでと比べて大人しく過ごす必要があります。
長期政策案は3つの“パッケージ”に分かれています。1つ目が季節に関係のない「ベーシック・パッケージ」。握手の習慣など人との接触を可能な限り避ける、まさに“ベーシック”な内容です。
2つ目が「ウィンター・パッケージ」。新型コロナウイルスを“インフルエンザ・プラス”とみなし、冬場に各自が病気にかからないよう自発的に習慣を改めていくというものです。
3つ目が「エマージェンシー(緊急)・パッケージ」で、感染拡大状況によっては今後もロックダウンが実施できる可能性を残しておくというもの。ただし、現在のように経済活動や人々の心身にこたえる厳しいロックダウンはもう行わない方針のようです。
こうした指針ができることで、人々や企業は先を見越した手を打てます。例えば、夏場の大規模な音楽フェスティバルは従来通り数万人を集めて開催することができるはず。冬場は小規模なコンサートや演劇などを、客と客の間に空席を作って開催することになるでしょう。レストランは春と夏に平常通り、秋は様子を見ながら営業し、冬場はテイクアウトに力を注ぐことになるのではないでしょうか。
学校も変わってきます。学生は春から秋にかけて学校へ通い、冬はリモート授業が中心になったり、夏休みが短く冬休みが長くなったりする可能性が考えられます。
こうした新たな行動様式のリズムが定着すれば、近い将来に政府も補助金を支給する必要がなくなるでしょう。そうした狙いも、今回の長期政策案には含まれています。
「デ・テレフラーフ」紙の記事は、テレビの報道番組でも解説されるなど大きなインパクトがありました。「ウィズ・コロナの超現実策」と呼べそうな今回の長期政策案は、1月下旬の議会で討論される見込みです。
(中田 徹)
中田 徹(なかた・とおる)
1998年に日本企業の駐在員としてオランダへ赴任。2002年に退職し、フリーランスのスポーツライターとして活動を始める。ライフワークのサッカーを追って欧州各地を取材してきたが、現在はコロナ禍のためオランダとベルギーに活動地域を絞っている。オランダ・スポーツプレス協会で唯一人の日本人メンバー。