ライフスタイル
サンタは年越しまでお仕事!? スペインで年明けに食べるお菓子はまさに“ババ抜き”
公開日: / 更新日:
大人も楽しむお菓子の中に入っているのは「王様」か「ソラマメ」か
そんな子どもたちが楽しみにしている公現祭。食べることが大好きなスペイン人にとって、この日に大人も一緒に食べる「ロスコン・デ・レジェス」というお菓子は欠かせません。「ロスコン」はドーナツ型の形状を指す言葉。「レジェス」はスペイン語で「王様」という意味で、東方の三博士のことを指しています。
このお菓子はブリオッシュ的な甘い生地でできています。表面は砂糖漬けのフルーツ、ドライフルーツ、ナッツなどでカラフルに飾られていて、いかにも子どもが喜びそう。間に何も挟んでいないプレーンタイプもありますが、生地の真ん中に生クリームやカスタードクリーム、最近ではチョコレートクリームなどを挟んだものが人気です。
このロスコンには通常、紙でできた王冠がついてくるのですが、それには理由があります。実は、ロスコンの生地の中に陶器でできた王様の人形、そしてソラマメの形をした人形が隠されているのです。外からは見えないので、切り分けたお菓子を実際に食べるまで、誰に何が当たるかは分かりません。
王様の人形が当たった人は、ロスコンについてきた王冠をかぶることができます。逆に、ソラマメが当たった人はこのお菓子代を払うことに。日本のトランプで“ババを引く”イメージです。起源を探っていくと、ソラマメは豊穣の象徴とのこと。なので、ソラマメを引いた人は“今年は恵まれますよ”という解釈もあるそうです。ちなみに、こうした趣向の“公現祭スイーツ”はフランスにもあり、「ガレット・デ・ロワ」と呼ばれているそうです。
公現祭が終わると、ようやくスペインのクリスマスも終わりを告げます。何はともあれ、「わー、王様が当たったー!」「今日一日、王冠をかぶっていていいよ」「やったー!」「えー、私はソラマメが当たったのにー」などとにぎやかに新年を過ごすのは、いかにも幸運を呼び込みそうな風景です。
笑う門には福来たる。笑いながらおいしいものを食べることは世界共通、かつ最強の開運術ということなのかもしれません。
(山本美智子/Michiko Yamamoto)
山本美智子(やまもと・みちこ)
東京生まれ。清泉女子大学でスペイン語を専攻した後、外資企業の総合職に就職も、一度は海外に住みたいとの夢を捨て切れず、バルセロナ大学へ語学留学。現在はスペイン独立主義の伴侶とともに、バルセロナ郊外で生活中。日本のメディア及び地元のサッカークラブ向けの翻訳、通訳、執筆、取材、コーディネーション、インタビューなどのサービスに従事。最近の趣味はヨガと料理。癒やしは保護センターから引き取ってきた2匹の猫。