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東大寺の僧侶と同じ薬湯を自宅でも 誕生の経緯と中身に歴史がぎっしり 誕生の裏側は

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著者:Hint-Pot編集部

関西で春を告げる風物詩でもある東大寺修二会(お水取り)【写真:Getty Images】
関西で春を告げる風物詩でもある東大寺修二会(お水取り)【写真:Getty Images】

 まだまだ寒さが厳しい今日この頃、お風呂タイムをじっくり楽しみたくなりますよね。おうち時間の増加に伴い、入浴剤の売り上げは上昇しているとか。「もっと温まるものはないのか!」と探し求めるファンも多いでしょう。そこで注目したいのが、日本のお寺でもひときわ高い知名度を誇る東大寺(奈良県奈良市)のオリジナル薬湯。県のふるさと納税で返礼品にも使われているヒット商品「東大寺 薬湯 天真」について、共同開発者の一人に話を伺いました。

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奈良の伝統行事・東大寺修二会(お水取り)で使われる薬湯とほぼ同じ

 袋を取り出した途端に鼻をくすぐる生薬の香り。湯船に入れると、お湯がうっすらと茶色に染まります。湯船に身を沈めて、立ち上る香りに思わず深呼吸。そのうちどんどんと汗が流れ出し、体の芯が温まる状態を実感することができます。ポカポカはお風呂上がりでも継続し、寝床につくといつの間にか熟睡。おまけにお肌はツルツルです。

 こうした入浴体験を実現してくれるのは、大仏様でおなじみ東大寺の「東大寺 薬湯 天真」。2010年の発売以来、風呂好きの間で話題になっているヒット商品です。その商品名からして、はずれなしのムード満点。開発者の一人であるNPO法人「奈良好き人のつどい」理事長の辰巳裕さんは、それを裏付けるような開発エピソードを語ります。

「この薬湯が生まれた背後の一つには、東大寺で毎年3月に行われる『修二会(しゅにえ)』があります。まだ寒い中で行うため、参加する僧侶たちは生薬が入った薬湯のお風呂に浸かるんですね。2010年に『平城遷都1300年祭』を迎えるにあたり、このお水取りの薬湯に倣ったものが新しく販売されることになったんです」(辰巳さん)

東大寺修二会(お水取り)の舞台となる二月堂【写真:Getty Images】
東大寺修二会(お水取り)の舞台となる二月堂【写真:Getty Images】

「お水取り」とも呼ばれる修二会は、高台に建てられた二月堂から燃え盛る巨大たいまつを突き出すというダイナミックな場面でおなじみ。総力を挙げて平和を祈願するという、およそ1300年間一度も絶えることなく続いている伝統行事です。コロナ禍の中でも継続され、2021年の開催前には東大寺別当(住職)の狹川普文さんが朝日新聞の取材に対し「修二会をしなかったら東大寺は解散したらいい」と強く語ったほど。今年ももちろん開催に向けた準備が進んでいます(一般見学は不可)。

「東大寺の建立を夫の聖武天皇に進言したといわれる光明皇后は、施薬院(奈良時代の庶民救済施設・薬園)を設立して庶民を助けました。そこでも薬湯のお風呂は重要な位置にありましたから、『平城遷都1300年祭』に薬湯を開発するのは良いタイミングだったともいえますね」(辰巳さん)