仕事・人生
農業女子デビューは結婚がきっかけ 目の当たりにした山積みの桃からフードロス解決へ
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副業や地方移住のブームに合わせて、近年は農業への関心が高まっているそうです。その土地や作物と常に向き合う仕事だけに、デスクワークとは異なる創造性やアイデアが必要になることも。またそこには、現代社会の特有の問題に対するアプローチも付随するでしょう。さまざまな分野で活躍する女性たちが生きる中で感じたことや苦悩などから、彼女たちの人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回は結婚を機に夫の実家の果樹園を手伝うようになり、そこでフードロス問題に気付いた景井愛実さんの前編をお届けします。問題の解決に取り組み始めた景井さんの思いとは?
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農業を手伝い始めて感じた衝撃の事実…本格参入する起点に
農林水産省が2013年、職業として農業を選択する女性を応援するために設立した「農業女子プロジェクト」。今では全国から800名以上が参加する規模に成長し、“農業女子”というワードもよく耳にするようになりました。
景井愛実さんも、そんな農業女子の一人です。人と接することが大好きな景井さんは独身時代、福島県内でコスメなどを販売する美容部員として働いていました。結婚を機に同県の福島市で農家を営む配偶者の家族と同居することに。しかし、結婚当初は「人と関わりたい」との思いから、アパレル業界で活躍していました。
「育ちも同じ福島県内です。目に入るところに畑があるような環境で育ったのですが、農業に携わったことはありませんでした。何より夫はサラリーマンだったこともあり、当時は夫の実家が農家というだけで、まさか自分が農業に携わるようになるとは思ってもいませんでした」
「いつからっていうのが言えないんです(笑)」と話すほど、景井さんが農業に携わるようになったのは自然な流れだったそう。家族4世代が同じ屋根の下で生活する中、家事を手伝うのと同じように農家の手伝いを始めていたといいます。
初めての経験だった景井さんにとって農業は毎日が驚きの連続でした。最も衝撃だったのは、桃の収穫時に「販売できない桃が畑の隅に山盛りに積まれていたこと」だったそうです。
「収穫って、箱詰めして出荷して販売するという一連の流れがあるんですけど、その一方で出荷ができないような桃、いわゆる『規格外』と言われるようなものがあります。もちろん私たちも食べますが、食べ切れない分は畑の隅で山盛りに積まれているんです。見渡してみると、周りの畑も同じような状況。食べるために作ったものが畑に帰されているという状況が、すごく衝撃的だったのを覚えています」