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仕事・人生

“かわいい×農業”を発信する農業女子 「自分のスタイルは外せない」理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

どっぷり浸かった農業の世界「好きなものは変わらないけど、見えるものは変わってきた」

農園で採れたリンゴ【写真提供:景井愛実】
農園で採れたリンゴ【写真提供:景井愛実】

 SNSを使って自ら発信し、多くのメディアの取材にも応じる景井さんの元には、いろいろな相談やメッセージが送られてくるそうです。その内容は「具体的にどんなことをなさっているのですか?」という問い合わせから、「農業に興味があって、おじいちゃんの家に畑があるのでそこで何かをやりたいのですが、何ができますか?」といった相談まで多岐にわたります。

「恐らく私のようなフリーランスで農業をやっている人が意外と少ないのだと思います。だから私の元に届くメッセージはちょっと独特かなと」

 フリーランスで農業とは、確かにあまり聞くことがありません。これまで農業に携わってきて、あえて法人化していない理由はどこにあるのでしょうか。

「どこに集中して事業を行えば、畑の隅に廃棄される桃の問題を解決できるのか分からなかったからです。ただ、加工品に始まりいろいろなことをやって、一昨年の夏からは1年かけて実際に桃の栽培を行い、やっと収穫が終わりました。今はどこに集中して事業を行うと課題解決できるのかが見えてきた段階です。いよいよ本格的に事業計画書を書いて、法人化に向けて動き出せたらと思っています」

 農業に携わるようになって10年。「好きなものは変わっていないけれど、見えるものはすごく変わってきた」とも語ります。

「農業自体は元々やりたくなかったですし、当初は嫌々携わっていました。地方におけるジェンダー問題を垣間見ることもありましたね。でも、4世代同居なので、子どもを見てもらえる環境はありがたかったです。

 フリーランスという道を選んだのですが、よくよく考えてみると、以前から好きだったアパレルやコスメ、インスタ映えするようなお食事と、すべては農業から来ているということに気付きました。だったら『またかわいい世界を自分でゼロから作ればいいんだ』って。今はそんな世界を夢見ています」

少しでも多くの人たちに農業に携わってもらいたいと景井さん(左)【写真提供:景井愛実】
少しでも多くの人たちに農業に携わってもらいたいと景井さん(左)【写真提供:景井愛実】

 気付けばどっぷり浸かってしまった農業の世界。そして、切っても切れない農業と自然との関係。近年は自然災害が増え、フードロスの問題以前にそもそも農作物が採れにくくなっている現状もあります。今まではそのすべての責任を農家だけが背負っていましたが、このままでは将来的に農家の数も減り、食べるものもなくなってしまうかもしれません。

 そこで景井さんは、たくさんの人が農業に携われるクラウドファンディングをスタートさせました。

「年間を通して『Berry’s Garden』の畑に携われるような権利を含めたクラウドファンディングをスタートしています。応援してくださる皆さんの反応を見ながらアレンジをしつつ、他の農家さんも一緒に使っていただけるような仕組み作りを考えたいと思っています」

 農業を手伝い始めた頃に感じた「廃棄される桃を何とかしたい」という素朴な思い。これまで当たり前に見かけていた“畑の隅に山積みされた農作物”を減らすべく、“農業女子”景井さんの挑戦はこれからも続いていきます。

◇景井愛実(かげい・まなみ)
百貨店の化粧品・コスメ売り場で美容部員として勤務していたが、結婚を機に同じ県内の福島市へ引っ越し。アパレル販売員として接客業に従事する一方、夫の実家で4世代家族と暮らすうちに、自然な形で家業の農業に携わるようになる。そこで感じた疑問、特に「畑の隅に廃棄される大量の桃を何とかしたい」という思いから、フードロス問題に真正面から向き合うことを決意。10年間の試行錯誤の末に2017年、屋号である「Berry’s Garden」を立ち上げ、本格的に農業の道に入った。現在の事業内容は加工品の企画開発販売や飲食店、食品と果物の流通、畑の運営と桃の生産など多岐にわたる。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)