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謎の激痛に襲われる…元読モのシングルマザーが語る闘病記 「娘のために強くなりたい」

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

「ヘルプマーク」を付けていても、誰も助けてくれない

外見からは分からなくても、援助や配慮を必要としている人がサポートを受けやすくなるよう作られたヘルプマーク【写真:写真AC】
外見からは分からなくても、援助や配慮を必要としている人がサポートを受けやすくなるよう作られたヘルプマーク【写真:写真AC】

 いつどこで痛みが襲ってくるか分からないため就労が厳しく、現在は実家で両親の世話になりながら娘さんと暮らしている舞さん。常に痛みがつきまとう生活は2年経った今も続き、寝言で「痛い、痛い」と叫んでしまうこともあるそうです。

「病気になってからしばらくは娘と同じ部屋で寝ていたのですが、私が就寝中もずっと呻いていたらしく、かわいそうなことに娘はずっと耳を塞いで寝ていたようです。今は部屋を分けたので、私自身も気兼ねなく『痛い』と独り言を言えるようになりました」

 痛みを緩和するために薬を常用しているものの、それだけでは治まる痛みではありません。そこで舞さんは湯たんぽを常に持ち歩き、痛みが出た場所に当てているそう。なかなか痛みが治まらず、低温火傷ギリギリまで温めることもあります。そのため、通院時など外出時は「ヘルプマーク」を付けていますが、周囲の対応には心が打ちのめされることばかりでした。

「公共交通機関で移動することが多いのですが、ヘルプマークを付けていても、誰かが手を貸してくれたり、席を譲ってくれたりすることなんてほとんどありません。これが日本の現実なんだな……と、悲しくなることが多いですね。もちろん、コロナ禍で心に余裕がないこともあるのでしょう。でも、弱者が生活しにくい国なんだなぁって、ついマイナス感情を抱いてしまいます。まずはヘルプマークの認知が広がればいいのですが……」

娘のために強くなりたい…それが唯一の望み

一人娘とのツーショット。現在は母娘で実家に身を寄せて闘病している【写真提供:十文字舞】
一人娘とのツーショット。現在は母娘で実家に身を寄せて闘病している【写真提供:十文字舞】

 明確な病因は不明とされている「線維筋痛症」ですが、舞さんは医師から「心因性のストレス」も無関係ではないと聞いたことがあるそうです。

「私は元々おとなしい性格で、小学校と中学校でいじめられたことがありました。高校生になるとそれまでの弱い自分を変えたくて、『明るい私』や『楽しい私』をセルフプロデュースしたんです」

 当時は無理に笑い、自分を追い込んでキャラクター付けをしようと必死。家にいる時と外では「まったく別人のようだった」と振り返ります。

「モデル時代も『どうにかして生き残らなきゃ! 読者モデルなんだから、他人からバカにされてナンボ!』くらい思っていたかもしれません。当時のギャルモデルは、根暗でおとなしい子なんて需要ないですからね。いじられて、笑われて、それでいい。そう思っていたのですが、どこかで負担だったのかもしれません」

 そうした経験と線維筋痛症に関連があるかは分かりません。しかし今、舞さんの中で「弱いままの自分じゃダメだ! 自分自身が強くなる以外に道はない!」という強い意志が生まれつつあるといいます。

「仕事も家事もできず、痛みにうろたえながら寝てばかりいる。そんな私に対し、娘は『いいよ、私がやるから、ママ、寝てな』と、代わって家事をしてくれるんです。優しく健気に気を遣ってくれる娘の姿を見て、このまま情けない姿を見せ続けるわけにはいかない。病気を理由にして何もできないままじゃダメだ……そう思うようになりました。

 私が出ていた雑誌を見て育った娘にとって、私がきれいでおしゃれでかっこいいママでいることが唯一の自慢のようなんです。そんな娘のために、もっとかっこいいところを見せたい。わずかでいいから私の娘であることを誇りに思ってほしいですね」

 そんな舞さんは今、痛みをこらえながらモデルへの道を再度踏み出そうとしています。現役を長く離れていただけではなく、痛みとの闘いもあるため、先行きは決して明るくありません。それでも、少しでも誰かの目に留まる場で自分なりに活躍することで、自分と同じように外からは見えない障害を持って悩む女性たちを元気付けたいと思っています。

「きれいごとだと思われるかもしれませんが、私のように外からは見えない障害を抱えている人は多いでしょう。障害や病気が原因で働くことができず、仕方なく生活保護を受けているのに、それを責められてしまう人もいます。そういうやるせない思いを抱えている人たちの希望になれたら……と思っています」

 誰もが笑顔になれる暮らしを実現するためには、こうして小さいながらも声を上げることが大切。1人でも多くの方に、勇気と希望を……舞さんにとって“第2の人生”はまさに今、始まったばかりです。

(和栗 恵)