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漫画

アニメーターの配偶者 “今時の作品を観られない”理由とは 1万人が驚愕の「職業病」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

漫画のワンシーン【画像提供:見原由真(@ace7kg)さん】
漫画のワンシーン【画像提供:見原由真(@ace7kg)さん】

 世界でも類を見ないほどの膨大な本数がシーズンごとに制作され、クールジャパンの象徴として海外でも人気の日本アニメ。作品の高いクオリティを語るにおいて、アニメーターたちの素晴らしい技術力を欠かすわけにはいきません。しかし、美しい動きや効果、表情を作り出すには、やはり他人と違った視点が必要になるよう。そこで話題になっているのが、配偶者さんがアニメーターという漫画家の見原由真(@ace7kg)さんの作品です。ツイッターで1万件もの“いいね”を集めた作品と夫妻の日常について、詳しいお話を伺いました。

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作画監督になったばかりの配偶者 一緒にテレビを観ていると

 血のつながらない父娘がごはんでつながるスポーツフード漫画「アスメシ」(全3巻・講談社刊)の原作とネーム構成、「アーチェリーボーイ」(全4巻・LINEマンガ)などの作品で知られる漫画家の見原由真さん。配偶者のタッペイさんは現在、アニメの作画監督として活躍中です。そんなタッペイさんが大好きな見原さんは、自身のツイッターアカウントにタッペイさんの観察エッセイ漫画を投稿しています。

 今回話題になった作品は、タッペイさんが作画監督になったばかりの頃、一緒にテレビを観ていた時のお話。今時のアニメが始まると、タッペイさんはなぜか素早くチャンネルを変えてしまいました。

「アニメを見ると、キャラの動き(演技)とか作画とか、俺だったらどう描くとかが止まらなくて……アニメを楽しむどころじゃないんだよ!!」

 この言葉に見原さんは納得します。なぜなら作画監督とは、他のアニメーターから上がってきたカットを修正・チェックするポジション。さらに見原さん自身にも思い当たる節がありました。それは、漫画や映画を観ながら「自分だったら」と同時進行で展開を考えてしまうことです。

「好きなものが純粋に楽しめなくなってしまうのは、好きを仕事にした人間の避けて通れない道なのかもしれない」……と考えた見原さん。アニメと漫画で畑は違いますが「これはタッペイと私の貴重な共通点。今こそタッペイの職業病(苦悩)に寄り添い、癒やしとなる時なのでは!!」と気付きます。

キャラが動く度に“タイムシート“が見える!? 職業病の次元が違う

 そこで話をもっと聞こうと「他にアニメで思うこと」について質問をスタート。するとタッペイさんは、実際のアニメ作品を例に「どう見る?」と見原さんに尋ねました。

「女の子が一生懸命でぐっとくるかなあ、私は」
「俺は……キャラが動く度“タイムシート”が見える」

 タッペイさんによると、タイムシートとは絵とセリフ、効果音(SE)をどのタイミングで合わせるかの指示書。例えば口を動かすシーンでは「口以外(A)」「口(B)」とパーツに分け、言葉を発する時には1文字ごとにBの動きを指定するのだそう。

 これを聞いた見原さんはびっくり。職業病の次元が違いすぎるあまり「寄り添うどころか秒で振り落とされ」てしまいました。そうして、「今時のアニメが観られない」というタッペイさんの苦悩を癒やす計画は頓挫してしまいます。

 アニメファンからすると「好きなものが観られなくなるなんて……」と同情してしまいますが、心配はご無用。それから数年が経った今は作画監督の仕事に慣れ、最近のいろんなアニメ作品が観られるようになったことも描かれています。そこで見原さんは、焦ってお節介を焼くより「“時間そのもの”が有効な場合も、結婚生活にはある」と気付くのでした。

 ツイッターに投稿されたこの作品は1万件もの“いいね”を集めました。また、リプライ(返信)には「アニメーターあるある!」「ほんとこの気持ちが痛いほど分かる」「私はCGの方ですけど、これはガチ」といった同意の声が。また、アニメファンからは「考え抜かれた作品を毎週見せてもらえてるんだと感謝しかないです」といった感謝の声が寄せられています。

 さらに別の業界で仕事をしていると思われる方からも「良さげなキャンペーンは企画書と見積書が透けて見える」「ゲーム業界入って5年くらいはまともにゲーム見られなかったの思い出した」「ワシは印刷物見るとイラレ(イラストレーター)の画面が見える」といった報告も。考えてみれば、職業ごとに職業病が存在していて当然ではありますよね。