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生ゴミ堆肥化が義務に 米カリフォルニア在住の日本人女性が考える食品ロス問題解決のヒント

公開日:  /  更新日:

著者:小田島 勢子

食材の“使い切り”を重視したクラス 調理工程もシンプルに

食材を丸ごと使い切るアイデア満載のワークショップ【写真:小田島勢子】
食材を丸ごと使い切るアイデア満載のワークショップ【写真:小田島勢子】

 クラスでは毎回、テーマの食材や調味料などを1つに限定。「ゴミにしないこと」「今まで使い方を知らなかったり、使えずにいたりした食材や物から何かを作り出すことの楽しみ」をモットーに、できるだけすべてを使い切ります。

 実際に調理する食材などをもっと身近に感じられるよう、まずはその歴史や特徴、体への効果などを軽く学んだ後、レシピと実践に入ります。調理工程もできるだけシンプルに。家にある道具を使った、簡単な作り方をお伝えしています。道具は再利用できるようなものを使うことをおすすめし、ゴミを出さない工夫もお伝えしています。

 例えば「レモン丸ごと使い切り」のワークショップでは、レモンの歴史や効能などを説明後、保存がきくレシピ5種類を紹介しました。このレシピを順に作っていくと、「レモンの皮まで丸ごとすべて使い切り、残すところは種のみ」という仕組みになっているのです。また豆のワークショップでは、豆だけでなく煮汁までおいしく使い切るレシピを紹介。豆を煮る時間がない場合の安全な缶詰商品の選び方などもご説明しました。

 こうしたことを知ることで、自分が使う素材を選ぶところから意識を持ち、もっと材料や料理に愛情をかけられると思ったからです。

 本来ならば、自分で手塩にかけて畑で育てたものをいただくことで、きっとスーパーマーケットで買うものよりも味わいを感じ、心も深くつながってくると思います。ただ、現代ではたくさんの人がそんな時間も、環境もなかなか持つことができない状況にいることが多いでしょう(私もその一人です)。私なりに子どもに伝えたかったり、大切に思っていることを取り入れたりしながら、ワークショップをさせていただいています。

フードロスの解決へ教育も重要な手段

 みそやヨーグルトなどの発酵食品や保存食も、元々は冷蔵や保存技術が今よりも乏しかった時代に当時の人々が「フードロス」の対策で始めたもの。現代のように健康志向が先に立って作られたものではありません。

 一度にたくさん採れた魚や肉、野菜などを腐らせて無駄にしないよう、工夫を重ねて編み出された尊いアイデアなのです。そうした背景を考えると、昔の「フードロス」への取り組みや意味合いは現代とまったく違っていたことでしょう。

 多くの先進国において、現代は飽食の時代。特にここ米国だと人々は外食する頻度が多く、残すことや捨てることが当たり前に。モラルを変えるためにも、まずは教育から変えていく必要があるように感じています。というのも、米国の多くの公立の学校では「給食は残して良し、時間が来たら食べたくても廃棄する」がルールとなっているからです。

 生きるために必要な「食」。ただ、フードロスによって生きるための環境そのものが脅かされてしまっては、元も子もありません。この地球で今を生きる私たちだけでなく、これからの世代のために何ができるか。まずは一人ひとりができることから始めてみませんか?

 次回は、実際に私たちが家庭でできるフードロスの削減方法をお話ししたいと思います。

(小田島 勢子)

小田島 勢子(おだしま・せいこ)

ナチュラリスト。結婚を機に2004年に南カリフォルニア州へ移住し、3人の女の子を米国で出産。ロサンゼルスの片田舎でバックヤードに鶏たちと豚のスイ、犬のトウフとともに自然に囲まれた生活を送る。母になったことをきっかけに食や環境の大切さを改めて感じ、できることからコツコツと、手作り調味料や発酵食品、スーパーフードやリビングフードを取り入れた食生活をメインに、食べるものは「できるだけ子どもと一緒に作る」「残さない」がモットー。2015年に「RUSTIC」を設立。日本で取得した調理師の知識や経験を生かして食のアドバイザー、ライフスタイルのコーディネーターとして活動。日米プロスポーツ選手やアクション映画俳優の身体作りのアドバイザー、みそ、お酢、漬け物など発酵食品作りの講師、創作料理のケータリングなど幅広い分野で活躍。
https://rusticfarmla.com/