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宝塚は「自分で戦っていくしかない場所」 元花組トップ高汐巴さん50周年に語る昔と今

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

宝塚は「自分で戦っていくしかない場所」 映画を観て男性を研究する日々

宝塚歌劇団は「自分で戦っていくしかない場所」と高汐さん【写真:荒川祐史】
宝塚歌劇団は「自分で戦っていくしかない場所」と高汐さん【写真:荒川祐史】

竹山:そんな中でも音楽学校卒業後に宝塚歌劇団に入られた時から注目を集め、テレビなど外部の活動もなさっていましたよね。

高汐:バンビーズ(関西テレビのバラエティ番組「ザ・タカラヅカ」やドラマ出演に選ばれていた若手生徒)に研2(入団後の生徒は「研究科○年」と称され、ここでは2年目を指す略称)で抜擢されて、良い役をいただいたりして、スタートは良かったんです。でもその間にまた遊んじゃって……。もうとにかくメリーゴーラウンドみたいな、すごく楽しいところでした。先輩からはちょっと厳しいことを言われたこともありましたけど、その中で楽しみながら舞台を経験していったって感じですね。だからこういう風に出来上がったんだと思います。

竹山:音楽学校に入られてから芸事を身につけられるのは、かなり大変だったのではないですか。

高汐:ピアノとかも、譜面にシャープとかフラットとかいっぱい付いているところは「そこはもうやりました」とか「突き指してます」とか言ってサボって。お琴なんかもサボっていましたね。苦手なことがほとんど。ただ、声がしっかりと出ていたので、それに助けられたって感じです。

竹山:入団後、同期の方々は助けてくださいましたか。

高汐:はい、みんなで弱い部分は助け合いましたが、それでも自分で戦っていくしかない場所なので……。でも、そんな中ですごくいろいろなことを吸収していきました。女性が男性を演じる部分では、生活の中にまったくない感覚を身につけていかなくてはいけないわけです。フランス映画などを観て、男性のかっこいい所作などを勉強しました。

竹山:目標になるモデルさんとか俳優さんはいらっしゃったのですか。

高汐:すべてです。どんな映画もその中から参考にするというか。あと、美術館に足を運んだり、アートに触れたり、あらゆるものを参考にしたという感じです。

竹山:その頃は椅子に座る時も足を開かれて、普段から男っぽくしていたということも?

高汐:それはないです! 声も低かったので、男役は割と合っていたんじゃないですか。稽古は厳しかったですが、舞台は楽しく、面白かったですからね。

あがり症だった下級生時代 トップスターになる自覚はゼロ

桜をバックに立つ高汐さん【写真提供:高汐巴事務所】
桜をバックに立つ高汐さん【写真提供:高汐巴事務所】

竹山:初めて大階段(宝塚を象徴する舞台装置で、宝塚大劇場、東京宝塚劇場ともに26段。上手から下手までを占める巨大なもので、ステージの最後には華麗な衣装をまとった出演者たちが降りてくる)を降りられた時はどんな感覚でしたか?

高汐:怖かったですね。でも、初めてのことばかりで楽しかった。下級生の時はあがり症でしたから。役がつくに連れて緊張感が少しずつ増してきました。階段から落ちたことはないですが、怪我をしないように気を付けました。

竹山:そこから少しずつトップスターへの道を歩み始めたわけですが、宝塚に入られた皆さんたちがトップになっていく道筋のようなものは、どの辺りで感じるものなのですか?

高汐:新人公演(本公演の演目を若手生徒の配役で上演するもの。スター候補生たちが抜擢される)で主役がつき始めたり、あと新人だけで小さなホールでやる舞台で主役をやるようになったりした時には、そういうものを感じますね。あと、トップの方が抜けて(退団して)周りの人たちと「次は誰かな」とざわざわする感じの時とか。

竹山:自分がトップスターになるという自覚はあったのでしょうか。

高汐:私、まったくなかったんです。「そういう時期に飄々としてた」って植田紳爾さん(宝塚歌劇団専属の演出家。現在は特別顧問も務める)がおっしゃっていたくらいで。トップがどうこうというのは、あまり考えたことなかったですね。でも、そんな時に“ある噂”を聞いたんですよ。

<次回に続く>

◇高汐巴(たかしお・ともえ)※「高」ははしごだか
京都府京都市出身。1972年に宝塚歌劇団入団(58期)、愛称は「ペイ」。当初は星組に配属されたが、その後に複数の組替えで雪組と花組を行き来した。1983年9月に花組トップスター就任。低く艶のある甘い声と圧倒的な存在感で悲劇やコメディ、歴史物など華麗な舞台を演じきり1987年12月に退団。退団後は銀座博品館劇場、松竹座、御園座、明治座の公演などに数多く出演。その他、テレビドラマやトーク番組、CMなどで幅広く活躍。最近の主演舞台は「Dream Weaver『黒蜥蜴』~闇物語~」(2020年12月。三木章雄脚本・演出)、独り舞台「BLACK&SHADOWS」(2021年6月、高平哲郎脚本・演出)、朗読劇「ショパンとジョルジュサンド ノクターン~帰らざる日々」(2021年10月、三木章雄演出・北阪昌人脚本)。現在、大阪芸術大学芸術学部客員教授。著書に「清く正しく美しく」(日之出出版刊)がある。

○高汐巴初舞台50周年記念公演「Respect Me!」
【日時】4月28日(木)午後6時~、29日(金):午後1時~/午後6時~、30日(土)午後1時~
【会場】あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター・東京都豊島区)
【出演】高汐巴 未沙のえる 秋篠美帆 福麻むつ美 月影瞳
【作・演出】三木章雄(宝塚歌劇団)
【音楽監督】栗山梢
【主催】「Respect Me!」製作委員会、高汐巴事務所
【共催】豊島区
【金額】8500円
【公式サイト】高汐巴オフィシャル ウェブサイト
【チケット申し込みサイト】https://www.quartet-online.net/ticket/respectme

(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)

(インタビュアー:竹山 マユミ)

竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)

明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。