インタビュー

話芸のプロ直伝「伝わる話し方」 講談師・神田陽子が教える“人を惹きつける3要素”とは

著者:中野 裕子

講談師の神田陽子さん【写真:山口比佐夫】
講談師の神田陽子さん【写真:山口比佐夫】

 コミュニケーションが苦手な人は少なくありません。話したり、メールを書いたり、といった発信側のコミュニケーションへの苦手意識が強い人は、特に多いといいます。時には思いや考えを意図したように伝えられないために問題が起きたり、デメリットを被ったりすることも。しっかりと伝えるにはどうすればいいのか? 話芸のプロで、11月に寄席「新宿末廣亭」で夜席の主任(トリ)を務める講談師・神田陽子さんに、話し方のコツや心がけをお聞きしました。

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大切なのは発声と豊かな表情、テンポの良さ

 大学という場所をもっと知りたい、大学ではどんな勉強をしているのだろうかと興味を持ち、53歳で早稲田大学人間科学部の通信教育課程に入学。2016年度に卒業した私ですが、実は熊本の崇城大学で長年、客員教授をやらせていただいています。また、講談師としてさまざまな大学に呼んでいただき、講談を披露してきました。

 私が大学で行う講義では、学生にも講談に挑戦してもらっています。その時に指導するのは、まず発声。そして表情を豊かに、さらにテンポ良く話すこと。この3つが基本ですね。

 コミュニケーションも基本はこの3つではないでしょうか。声が小さくてゴニョゴニョと話したら、そもそも何を言っているのか、相手には伝わりません。声を張ってハッキリ話せば、まず相手にこちらの言葉が届きます。

 そして、表情と抑揚をつけて話せば、こちらの思いが伝わります。たとえば、電話で「もしもし」というだけでも、暗く単調に「もしもし……」と言うのと、明るく「もしもし♪↑」と言うのでは相手への伝わり方がまったく違いますよね。前向きな気持ちを伝えたいのなら、女優になったつもりで、ちょっと大げさなぐらいに「もしもし♪↑」と言ってみてください。対面の時は笑顔で。前向きな気持ちが伝わると思います。

電話は大事な用件から順に話す 最後にもう一度自分の名前を

伯父から渡された講談テープがきっかけで講談師に【写真:山口比佐夫】
伯父から渡された講談テープがきっかけで講談師に【写真:山口比佐夫】

 講談師になる前の私は女優志望だったため、文学座の養成所でレッスンを受けていました。その頃に伯父から講談のテープをもらい、初めて聴いたところ「講談なら一度に1人で何役も演じられる」と魅力を感じ、「講談師になろう!」と方向転換したんです。その時々の自分の気持ちをうまく伝えたいと思ったら、演じる要素は役に立ちますよ!

 こうした基本を教えただけでも、学生は話し方がうまくなって、講談を披露すれば他の学生から拍手をもらえる。それが成功体験となって自信につながるようです。

 コミュニケーションは失敗がつきもの。もしうまく伝えることに失敗し、一度でうまく伝わらなくても、そういうものだと思って、次は別のやり方で伝えてみる。うまく伝われば、自信になり経験になる。そうやって失敗しながら練習して、経験を積み重ねる以外にないと思いますね。

 最近は「特に電話が苦手」という人が多いとか。社会人になったら、電話することも求められますよね。苦手意識が強い人は、自分の携帯電話の留守番電話に吹き込んで練習してみるといいと思いますよ。そうすると、「自分はこんな声でこんな話し方をしているのか」「伝わりにくいな」「もっとこうしたらいいな」といったポイントが分かると思います。

 私が心がけているのは、大事な用件から順番に話して、最後にもう一度自分の名前を言うこと。試してみてください。