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娘の色鉛筆にまさかの彫刻 仏師のこだわり詰まったいたずらが大反響 「私のも彫って」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

服飾の世界から「京仏師」の道へ 「時間軸の壮大さ」に感動

 学生時代はファッションデザイナーを目指し、服作りを5年間学んだ宮本さん。それが一体なぜ、仏像彫刻の世界に入ったのでしょうか?

「服作りを5年学んで、同時に表現の幅を広げるために絵を描き始めていました。そうした頃、今の師匠が大きな観音様を作っていらっしゃって、兄の紹介でその衣の柄を彩色する仕事を始めたんです。手伝った期間は3か月ほどでした」

 そうして触れた仏像制作の世界は、これまでの価値観を大きく覆すものでした。

「服は作ると来年にまた新しい物と入れ替わるという、目まぐるしい“ものづくり”です。かたや仏は1000年、あるいはそのもっと先まで考えて作ります。そうしたものづくりが持つ時間軸の壮大さにやられてしまいました。そこから取り憑かれるように彫り続け、9年間の修行の末に独立。今は弟子2人と一緒に日々楽しんで造仏に励んでいます」

「こんないかつい仏像も彫ります」と宮本さん【写真提供:京仏師 宮本我休(@Gakyu_Miyamoto)さん】
「こんないかつい仏像も彫ります」と宮本さん【写真提供:京仏師 宮本我休(@Gakyu_Miyamoto)さん】

 とはいえ、一般にはなじみが薄い世界。普段のお仕事はすべて受注制作で、新しい仏像制作だけでなく、古い仏像の修復、寺院の仏具や干支などの木彫刻作品の制作も行っているそうです。仏像制作も以前は寺院からの依頼が多数でしたが、最近は個人での依頼も多く、寺院の6割に対して個人は4割に達しているとか。

「仏像の制作は1年あたり5、6体でしょうか。年によってばらつきがあります。多く作るサイズは高さ30センチ前後ですが、それでも1年くらいは納期をいただいています」

 また、服飾を学んでいたことは今の仕事にプラスとなっているそう。

「仏像はほとんどの場合、衣をまとわれています。学生時代に散々布を触ってきて、質感や身を引き立てる衣の美しさ、表現を身につけました。それが仏様の衣を彫るときに生かされています。紆余曲折あった人生ですが、何事も無駄ではなかったと思っています」

 さらに「仏師」という仕事をするようになって「自分が制作した仏で人を救えるんだ、ということを感じました」とも語ります。

「友人や親族以外で何かすがれるものがある、ということは、とても必要なことだと考えています。心を疲弊する時代に入っていますが、第三者としてすがれる大いなる何か、それは仏ではないでしょうか。それを具現化できる仏師という仕事は、やりがいがあって魅力的だと思います。混沌とした世の中ですが、人に癒やしや救いを与えられるような仏を作れるよう、日々心がけています」

 宮本さんの活動はYouTubeチャンネル「宮本我休」や公式サイト、インスタグラム(gakyu01)でも見ることができます。これをきっかけにして、奥深い仏像彫刻の世界に触れてみてはいかがでしょう。

(Hint-Pot編集部)