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4月8日の「花祭り」 お釈迦様の像に甘茶をかける理由とは 像のポーズにも深い意味が

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

甘茶を注ぎかけて無病息災を願う

「花祭り」では誕生仏の頭上に甘茶を注ぎかける(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「花祭り」では誕生仏の頭上に甘茶を注ぎかける(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「花祭り」の参拝者は、ひしゃくですくった甘茶を誕生仏の頭上に注ぎかけることで生誕を祝い、さらに無病息災を願います。お釈迦様が生まれた時、天から九頭の龍が産湯として香湯をかけた伝説に基づく風習です。

 元々は「香水」と呼ばれる「五色の香水」をかけていました。青、赤、白、黄、黒の5つの色の香水だったようです。しかし、手間や費用がかかるなどの理由からか、江戸時代になって「甘露の雨」に見立てた甘茶が用いられるようになりました。

 甘茶はその名の通りお茶の一種で、日本特産のユキノシタ科に属する落葉低木でヤマアジサイの変種の葉を乾燥、発酵させたものです。「花祭り」では誕生仏にかけるだけではなく、実際に飲んだり目につけたりして、穏やかで健やかに暮らせるように願いを込めます。

 また、甘茶は習字の上達にもご利益があるとされ、甘茶入りの墨で習字を練習するときれいな文字が書けるようになるとの言い伝えもあります。この墨で「千早振る卯月八日は吉日よ、神下げ虫を成敗ぞする」とおまじないの歌を書いたものを門口や柱に逆さまに貼り、虫よけにする風習もあるそうです。

 お釈迦様が誕生の際に唱えた「天上天下唯我独尊」とは、一人ひとりが「他の誰とも代わることのできない絶対的な尊さ」を持ち、その尊い者同士がお互いを尊重していく大切さを説いたものと考えられています。4月8日はそうした意味を噛み締めながら、改めて感謝の心を込めて過ごすのも良いでしょう。

【参考】
「有識故実から学ぶ 年中行事百科」八篠忠基著(淡交社)
「図解 眠れなくなるほど面白い 日本のしきたり」千葉公慈監修(日本文芸社)
「日本のしきたりがまるごとわかる本」(晋遊舎)
「季節の行事と日本のしきたり事典ミニ」新谷尚紀監修(マイナビ文庫)

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu