漫画
“子どもの眼鏡”に対する偏見 母の訴え描いた漫画に反響「心に響いた」
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子どもの50人に1人は視力が正常に育たない「弱視」といわれています。子どもの弱視は早期発見が重要になるため、厚生労働省は令和4年度から「屈折検査」機器の購入費用に対する補助を始めました。弱視であることが分かると、眼鏡などで矯正をする必要があります。しかし、小さな子どもが眼鏡をかけていると「小さいうちからかわいそう」と考える人もいるようで……。今回は弱視の息子を持つ母親が綴るエッセイ漫画をご紹介します。見知らぬ人からかけられた心ない一言、そこから感じたこととは? 偏見に満ちた言葉を無意識に言ってはいないか、自身の行動を振り返る必要性も感じる作品です。作者のまる(domarumaru)さんに詳しいお話を伺いました。
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「ゲームばっかりするから目が悪くなるのよ!」と言い捨てられ…
まるさんは配偶者さんと6歳の息子・アキくんの3人家族。インスタグラムには、日々のユニークな事件や育児中のドキッとした体験など、幅広いエピソードを漫画で投稿しています。
今回ご紹介する「眼鏡をかけた息子への偏見」というタイトルの漫画は、アキくんが4歳の頃のお話です。斜視・弱視・遠視のため、3歳から眼鏡をかけているアキくん。幼稚園では先生の理解もあり、周りのお友達からも褒められるなど、「眼鏡の自分」が大好きでした。
また、大半の人は「眼鏡似合うー! かわいいーっ」など好意的な反応ですが、街を歩いていると時には「まだ小さいのに眼鏡なんてかわいそう……」と言う人も。そう聞くといつも、まるさんは傷付いてしょんぼりしてしまいます。そんなまるさんに、アキくんは不思議そうに尋ねるのです。
「眼鏡かわいしょー(かわいそう)? アキはかわいしょー(かわいそう)なの?」
その度にまるさんは、「ううん! 眼鏡かわいいねって言ったんだよ!」と言って、アキくんをギュッと抱きしめていました。しかし、2人はある日突然、まったく見ず知らずの年配女性から言いがかりをつけられてしまいます。
「あーあー! 今の子はゲームばっかりしてるから目が悪くなるのよ! 外で遊びなさい、外で!」
女性はそう言い捨てると、その場からすぐにいなくなってしまいました。
「はいーっ!? めっちゃ外で遊んでますし、ゲームしたことないんですけどぉぉぉー!」
と、まるさんは怒り心頭。一方で、女性の発言はアキくんの心を深く傷付けていたようです。そのことが分かったのは後日、他の年配女性から声をかけられた時のことでした。アキくんの眼鏡を褒めてくれた女性に対し、浮かない表情で驚きの返事をしたのです。
「アキねえ、ゲームばっかりしてたから目が悪くなっちゃって眼鏡なんだよー」
「ゲームなんてしたこともないでしょ!?」とまるさんはびっくり。そう答えた理由を尋ねると、「言われたもん!」と先日の年配女性の言葉を気にしているようでした。そこでまるさんは、アキくんに優しく語りかけます。
神様が、この子は眼鏡がとっても似合うからかけてもらおうと思ったのかもしれないねということ。アキくんは、目はちょっと見えにくいけれど、その分おみみがすごくいいよねということ――。
その言葉でアキくんは元気を取り戻し、輝くようなニコニコ笑顔に。漫画の最後、まるさんは語りかけます。
「どうか『眼鏡=かわいそう』という偏見で、子どもや親を傷付ける言葉を投げるのはやめてください。大人が『かわいそう』という言葉を使うことで、子どもは『自分はかわいそうな子なんだ。眼鏡は良くないことなんだ』と誤った認識を心に植え付けてしまいます」
大切なメッセージが込められたこの漫画は大きな反響を呼びました。そして読者からは、「たった一言でこんなにも子どもの心を変えてしまう。言葉も一種の凶器」と、心ない発言に対する怒りの声も。また、「心配なのは分かるけど、私も実母にさんざん『かわいそう』と言われた」「眼科で『(子どもはしたこともないのに)ゲームのやりすぎ! お母さんしっかりしないと』と先生に怒られて何も言えなかった」など、同じように他者の言葉で傷付いた経験を報告する声もありました。
また、「とっても素敵な声かけ、心に響きました」「まるちゃんがママで、アキくんは幸せやな」などまるさんの言葉に感動したという声や、「眼科に行くと小さい眼鏡の子が多いなーと、特に何も言わないけどぼーっと見てしまうことが多かったので、これからは『かっこいいね』って声をかけてあげたい」といった意見も見受けられました。