食
ティーバッグ1つで砂糖不使用のミルクティーが! 画期的商品の開発担当者が語る苦労とは
公開日: / 更新日:
フィルター製作と茶葉選定で失敗の連続 試した組み合わせは何と300種類!
茶葉と粉末飲料の両方を扱っている三井農林ならではの商品ですが、完成までにはかなりの苦労があったそう。商品開発を担当した同社R&D本部 応用開発部に所属する天野貴浩さんは、きっかけを次のように話します。
「工場に行った時、日東紅茶の基幹商品であるティーバッグ紅茶『デイリークラブ』に粉末飲料のロイヤルミルクティーを入れるとおいしい、という話を耳にしました。そこで、茶葉とミルクが一緒に入っているものがあれば楽なんじゃないかと思ったんです」
天野さんが社内で提案したのは2016年。そこから悪戦苦闘の日々が始まりました。そもそもミルクパウダーと茶葉を一緒にすることは、口で言うほど簡単なことではありません。まずぶち当たったのが、ティーバッグの問題。茶葉とミルクパウダーは大きさや成分の溶け出しやすさが違うため、両方がバランス良く抽出されるティーバッグは従来商品にありませんでした。
「ティーバッグに使うフィルターをメッシュが細かいものにすれば、ミルクパウダーはこぼれないけど茶葉が出にくい。メッシュが粗いものだと、パウダーがこぼれてしまう。また、粒子の細かいパウダーでは、ティーバッグを閉じる際に接着不良を起こして穴が開いてしまう恐れがありました。とにかく最初は失敗ばかりでしたね」
優れたフィルターの製作に加え、味がしっかり出るような茶葉の選定。さらにパウダーも既存のものではなく新たに開発しました。試した組み合わせは何と300種類以上にも及んだそう。当然、コストや年間を通じて安定供給ができるかということも考えなくてはなりません。天野さんの心は「何度も折れかけた」そうです。そんな苦労を間近で見ていた前田さんは、当時を次のように振り返ります。
「最初は、『売れないんじゃないか』など、社内での評判は芳しくありませんでした」
しかし、天野さんはそうした声にも負けず、決して諦めませんでした。そして苦労を重ねた結果、ようやく最高の条件を満たしたティーバッグと配合が決まり、商品化にこぎつけたのです。
甘さを感じる「ハチミツ」入りとスパイスの香り広がる「チャイ」を限定試験販売
天野さんは今回のこだわりとして、「砂糖不使用で甘さを控えめに」した点と「茶葉本来の香りが楽しめる」ところを挙げました。また、生分解性フィルターを採用したことでゴミ問題の心配を減らし、「持続可能な社会を実現するSDGsに配慮した商品」になっていることにも胸を張ります。
ファンからの声も多数届いており、中でも多かったのは「牛乳を入れると冷めてしまうけど、これは冷めないからうれしい」という感想でした。また「野外でも飲める。キャンプ泊時にも持参できる」という声も。満足したという声が多い一方で「味が軽い」と物足りなさがあるという意見もありましたが、天野さんたちはそういった声にも真摯に耳を傾けています。
「日東紅茶TeaMart」はそうした声を受けて、「甘くないミルクティー」のコンセプトをあえて外してハチミツを加えた「ミルクとけ出すティーバッグ はちみつ」と、香料不使用でスパイスの香り高い濃厚なチャイを表現した「ミルクとけ出すティーバッグ チャイ」(ともに4袋入り、378円)の2種類を新たに開発。3月25日から限定試験販売をスタートしています。
お客様の声とともに作り上げていく、日東紅茶の新たなミルクティー。今後の進化から目が離せません。
(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)