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仕事・人生

かき氷有名専門店は“氷の神様”とのご縁で 導かれた女性のキャリア遍歴は「思いつくまま」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

キャリアチェンジを重ね…氷室神社に導かれたかき氷の縁

 高校生の時、京都で外国人旅行者の観光案内ボランティアを経験。日本文化に興味を抱き、大学では日本文学を学びました。卒業後は「好きな着物に関わる仕事をしたい」と呉服店に就職。3年勤めた後に「仕事こそが勉強への一番の近道」と、金融について学ぶため銀行に転職しましたが、30歳を迎える頃には体や健康に興味を抱き、飲食業界で食を学び始めました。

「当時お世話になったのが『清澄の里 粟』(奈良県奈良市)というレストラン。そこで雑穀について学ぶうちに、台湾の『擂茶(れいちゃ)』という雑穀スープのようなお茶と出会いました。マーケティングに興味があり、また自分が見つけた物を広めたいと思って、輸入した擂茶をネットショップで販売したり、お店に卸したり、出店したイベントで対人販売をしたり。その中でたまたま、『3年間限定で実店舗をやってみないか』とお誘いいただいたんです」

 その実店舗で浮かんだアイデアが擂茶のかき氷。「どうすればお客様に響くだろうと試す中での出会いでした」と振り返ります。

 同じ頃、導かれるように出会ったのが、氷の神様を祀る氷室神社でした。「奈良に食を中心とした観光要素を作ろう」と集まる地元有志グループを通じ、氷室神社を訪問した際に宮司さんと意気投合。そこで「かき氷のお祭りを」と2014年から始まったのが「ひむろしらゆき祭り」です。

氷とかき氷が祀られた2014年ひむろしらゆき祭りの神事【写真提供:岡田桂子】
氷とかき氷が祀られた2014年ひむろしらゆき祭りの神事【写真提供:岡田桂子】

 実行委員長を務めた岡田さんは仲間と力を合わせ、さまざまなサポートも受けながら、わずか3か月の準備期間で「ひむろしらゆき祭り」を開催。多くの人にかき氷の魅力を伝えたいと準備を重ね、緊張の本番を迎えました。

「たくさんのお客様に来ていただいて大成功でした。この時に『せっかくなら氷室神社さんの近くに年中かき氷を楽しめるお店があってもいいよね』と、柿の葉ずし店を経営していた平井(宗助)と共同出資して『ほうせき箱』を作ることになったんです」

第9回を迎える「ひむろしらゆき祭り」 今年は4月15日から開催

 コロナ禍による開催中止を挟みながら今年で9回目となる「ひむろしらゆき祭り」は、4月15日(金)~5月8日(土)に開催されます。かき氷好きが「一度は参加してみたい」と憧れるイベントになったのと併せ、全国のかき氷店を象徴するような存在になった氷室神社は、岡田さんも常に心を寄せる場所だそうです。

「毎月の会議やお祭りなど、氷室神社さんとは密にお付き合いをさせていただいています。かき氷を愛する我々を温かく見守ってくださり、何でも相談できる心の拠り所ですね。全国からかき氷店がお越しになり、東京にも氷室神社さんのお札を貼っているお店がたくさんあります。氷室神社さんを頂点に全国のかき氷店がまとまり、1年に一度『ひむろしらゆき祭り』で集うという形ができてきました」

 今年はお祭りの初日、4月15日にかき氷事業者を対象とした勉強会「ひむろしらゆきフォーラム」を開催。それぞれが持つ技術やアイデアを共有し合ったり、疑問を相談し合ったり、かき氷が末永く日本の文化として愛されることを目指して高め合うそう。かき氷界の特徴は、手の内を隠さず、みんなで盛り上がろうという横のつながり強いことかもしれません。

「かき氷はフワフワがいいという方がいたり、しっかり食べ応えがある方がいいという方がいたり、特に今風のかき氷には“正解”がないから楽しい。みんなでいろいろと相談できる関係を作っていけたらと思っています」

店内に飾られた「ほうせき箱」への想い【写真:Hint-Pot編集部】
店内に飾られた「ほうせき箱」への想い【写真:Hint-Pot編集部】

 運命に導かれるように、キャリアチェンジを重ねながら「ほうせき箱」にたどり着いた岡田さん。呉服店、銀行、飲食店とまったく異なる世界で積んだ経験に無駄なものはありません。そこで、新たなチャレンジを考えている人にはこんなアドバイスを送ります。

「始めるきっかけや背景など入口はそれほど重要ではないと思うんです。大切なのは、新しい世界に飛び込んだ後。その選択が間違いじゃなかったと思えるように自分を持っていこう……と、必ず考えるようにしています」

 最良の選択をしたか否か、決めるのは他でもない自分。どのキャリアでも「自分が好きなことを人に伝えていきたい」という思いで歩み続けてきた岡田さんの姿には、背中を押される人も多いのではないでしょうか。

◇岡田桂子(おかだ・けいこ)
大阪府出身。高校時代に京都で経験した外国人旅行者の観光案内ボランティアから日本文化に興味を抱き、大学で日本文学を学ぶ。茶道や華道を学ぶ中で着物に親しみ、卒業後は呉服店に就職。銀行への転職を経て、30歳を機に健康と食の学びを深めようと飲食業界へ。台湾の「擂茶(れいちゃ)」と出会い輸入販売を手がける中でかき氷と出会う。同時期に氷室神社(奈良県奈良市)との縁がつながり、2014年に実行委員長として「ひむろしらゆき祭り」を開催。これをきっかけに神社近くで共同経営者の平井宗助さんと通年営業のかき氷店「kakigoriほうせき箱」をオープン。かき氷の魅力を広めている。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)