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「とりあえず財形貯蓄」はバブル世代の考え? 低金利時代にメリットはあるのか 税理士・板倉京が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

財形とはどんな制度なのか 特徴を見極める

 では、財形とはどんな制度なのでしょうか。その始まりは1971年(昭和46年)。国と会社が連携しての従業員の資産づくり支援を目的とした福利厚生で、「一般」「年金」「住宅」の3種類があります。特徴は大きく見て3つです。

1. 毎月、給与から決まった額を天引き
 給与から決まった金額の天引きは、無駄遣いを防いで貯蓄できる方法です。でもそれは、財形でなくても可能。私は、以前に紹介した「自動積立口座」を利用した方が良いと思っています。理由は、「財形」がさほどお得ではなく、使い勝手もあまり良くないからです。どうしてそうなのか? その理由の説明は下記に続きます。

2. 「年金」「住宅」型は利子が非課税
 バブル世代が会社に入った頃は預金金利が高く、年利7%という時期もありました。100万円預金すると、年間7万円の利子が付くということです。利子7万円だと、税金は約20%ですから1万4000円を引かれます。これが非課税なので、確かにメリットがありました。しかし、今は超低金利で年利0.001%。100万円を預けても1年で10円しか利子が付きません。税金は2円。これが非課税になると言われても……ですよね。

 また、「住宅」型の財形をしていて、「財形でお金を借りていると、有利な住宅ローンが組めて良いと聞いた」と話す人もいます。これは、「財形持家転貸融資」で、優遇金利を受けられる制度です。

 ただ、これも時代が過ぎてメリットが少なくなりました。確かにバブル時代は、住宅ローンの金利が8%以上にもなったので、優遇金利はありがたい制度でした。しかし、今は住宅ローンも超低金利。ネット銀行やメガバンクの優遇金利は、年利1%を切るもの少なくありません。こちら方が財形制度の融資よりも低金利だったりします。

3. お金を引き出す場合は会社に申請する
 財形を途中で解約する時は会社に申請するので、お金を下ろすのに1週間程度の期間や解約手数料がかかったりします。「年金」「住宅」型の財形を他の使途で利用するために下ろすと、非課税になっていた利子の税金がさかのぼって取られてしまいます。

 つまり、親世代のバブル時代にはありがたかった制度も、「今はほとんどメリットがない」ということです。ただ、財形の積立に上乗せ給付をしてくれる会社がまれにあるようです。その場合は、上乗せ給付の額次第で財形を検討する余地はあるでしょう。

 最後に。仕事もそうですが、何かをやり遂げるには先を見越し、戦略的に行うことが有効です。親や先輩らに勧められて、「とりあえず財形」の方は、今すぐにお金に関する思考停止を改めましょう。そして、より良い方法での資産運用を検討してください。8回にわたるこの連載で、その手助けができていれば幸いです。これまでのご愛読、ありがとうございました。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。