仕事・人生
馬と人間の仲介役に…手付かずの地を独力で開拓 「馬森牧場」を拓いた女性の思い
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長く続くコロナ禍がきっかけで住まいや仕事を変えた……という人も多いのではないでしょうか。変化を求める時には何事も覚悟を必要としますが、導かれるままに千葉県南房総市へ移住し、自らの手で牧場を開いた女性がいます。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回は南房総市で馬森牧場をたった1人で運営している菅野奈保美さんの前編です。馬とは無縁だった菅野さんが、なぜ女手一つで手付かずの地を開拓して牧場を始めたのか。じっくりとお話を伺いました。
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未開の地だったこの場所になぜ馬森牧場を作ったのか
「気持ちが良いってことですね」
菅野奈保美さんが緑豊かな千葉県南房総市に移住したのは今から15年前、2007年夏のことでした。
「景色もすごくいいし、立っているだけで気持ちが良い。連なった山の峰が発するエネルギーのようなものを直感的に感じ、心地よさを覚えました。『ずっとここにいられるな』と。そこで『次の物件はいいから、ここで決めちゃってください』と不動産会社さんに話し、即決したんです」
そうして、当時で築3年だった新しい家を購入。ただ、牧場を始めるためには、目の前に広がる手付かずの森を開拓する必要がありました。
「元々真っ暗で不健康な森でした。一年中葉っぱが落ちない常緑樹が生い茂った風通しの悪い森だったので、落葉樹を残して増えすぎたヤブニッケイなどの常緑樹を伐採。秋になると葉が落ちる落葉樹の多い森を目指して管理しています。年に2回くらいは専門の業者さんにお願いしますが、後はすべて自分で」
それまでの菅野さんは、木を切り倒したことも、土地を整備したこともありませんでした。何のスキルも持っていませんでしたが、「自分で経験しながら学べるのはいいチャンス」と前向きだったのだそう。約5年かけて土地を開拓して整備し、2012年には「馬森牧場」をプレオープンしました。その後も土地を購入して拡張を重ね、10年以上にわたって整備と管理を続けています。