仕事・人生
馬と人間の仲介役に…手付かずの地を独力で開拓 「馬森牧場」を拓いた女性の思い
公開日: / 更新日:
「馬がどういう動物であるのかをお伝えするのが私の仕事」
馬森牧場は単なる乗馬体験の施設ではありません。菅野さんは「皆さんに馬という動物がどういうものであるのかをお伝えするのが、私の仕事」という使命感を抱いているそうです。
「人間と馬との歴史は、まずは馬を食べることから始まりました。馬はずっと人間の食糧だったわけで、今でもほとんどがそうです。しかし、畜力を必要としなくなった現代にも馬の命がつながっているのは、人間に『馬が好き』という熱い思いがあったから。
でも、馬たちは人間の言葉を話すことができません。そのため、物言わぬ馬たちが何をどう思っているのか、今どんな感じ方をしているのか、どういう感情を持っているのかという、馬の本能や感情を皆さんに伝えられたらと思い、牧場を運営しています」
旅先で馬とのふれあいや乗馬を体験する観光客も多いですが、初対面で馬とコミュニケーションを取るのは意外と難しいものです。馬の頭を撫でようと手を出してみたものの、嫌がられた経験を持つ方もいるのではないでしょうか? でも、菅野さんによると「それは当たり前」なのだそう。
「いきなり知らない人がやってきて頭を撫でようとしたら、人間だって嫌ですよね? 目の前にパッと手が伸びてきたらびっくりするし、圧が強い。それに馬は人間と違って目が横に付いているので、距離感が掴みにくく、ピントが合うまで時間がかかります。だから後ろにのけぞったり、離れたりして嫌がる個体がいる。急に近寄って驚かせるよりも、静かに何もしない人の方が馬にとってはスマートでありがたいのです」
言われてみればその通りですが、意外と気付かない方も多いのだそう。そこで菅野さんは「馬のものの見方が人間と違うこと、人間との仲介役になれたら」と思っています。