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子どもの障害は隠さない ダウン症児を育てる元スキー選手の考えに美馬アンナさんが共感

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

出産後にダウン症と判明「一緒に早く死んでしまいたい」

須貝さんとレンくん【写真:荒川祐史】
須貝さんとレンくん【写真:荒川祐史】

アンナ:私は出産直後、産まれたばかりの息子を胸の上に乗せてもらった時に初めて「右手がない!」と気付きました。出産前の超音波検査では右手が隠れていて、お医者さんも気が付かなかったんです。未里さんも出産後にダウン症と分かったのですか?

未里:はい。私は出産2日後くらいです。生まれた直後は想像していた、いわゆる普通の赤ちゃんと少し違うなという違和感のようなものはありましたが、かわいいと思う気持ちの方が強くて、お医者さんに言われた時は「まさか!」でしたね。

アンナ:本当に「まさか!」ですよね。

未里:ダウン症だと聞いてどうしていいか分からず、この子を置いて病院から出ていこうかと考えたくらいです(苦笑)。当時は私が持つダウン症のイメージが、しゃべれない、歩けない、1人で何もできない、という悪いイメージばかりだったので、「私には育てられない」「なかったことにしたい」と思ったんですよね。この子と一緒に長く生きるより、一緒に早く死んでしまいたいって。こんなに笑う子になるとは思っていませんでした。早まらなくて良かったと思います(笑)。

アンナ:その気持ち、すごく分かります! 私も絶望の毎日でした。未里さんは何か前を向けるきっかけがあったのですか?

未里:近くにダウン症の方がいなかったので、SNSで同じような境遇の方の発信を検索するうちに、いろいろな考え方や価値観があってもいいのかなと少しずつ思うようになってきて。2か月くらい経った頃ですかね。抱っこしたら息子が笑ったんです。その笑顔を見た時、「私、この子のこと大好きだ」と覚悟が決まりました。

アンナ:私も周りに同じような障害がある人がいなくて、SNSで調べました。未里さんと同じように、最初は「何もできない」とマイナス思考で将来を悲観していましたが、SNSでいろいろな方の発信を見るうちに、マイナスなことだけではないかもと思えてきて。そんな時、夫から「生まれる前から手がないと分かっていても産んでほしいって言った」と言われて、気持ちがパッと切り替わりました。

未里:私の夫も最初、やはりショックを受けていました。でも、私が立ち直れないくらい絶望していた時、ふと「遺伝子検査をしておけば良かった。でも、検査で分かっていたらどうした?」と聞いたら、「分かっていても俺は産んでほしいと言ったと思う」と言われて、すごく安心したのを覚えています。

司会:一番近くにいる人と同じ方向を見ているのは大きな意味がありますね。

アンナ:夫は普段、子育てのいいとこ取りが多いし、何も考えていないのかと思うこともありますが(笑)、こういう重要な時にどんな決断や発言をするかで、その人の本心や自分に対する思いが垣間見られますよね。いつも母が言うんです。「男性は重要なタイミングで本音が分かる」って。私も未里さんもすごく重要な時に素敵な言葉をかけてもらいましたよね。改めて「この人で良かった」と。

未里:はい。そう思えたところも似ていますね!