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課題を抱えるドイツの歴史教育 “興味あり”の学生は56% 求められる学びのあり方とは
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2022年春から高校で日本史と世界史を融合した新科目「歴史総合」が必履修となり、日本の歴史教育は大きな転換を迎えました。近現代史分野を学ぶこの新科目導入には、グローバル化への対応といった狙いもあるそうです。海外の学校では歴史をどう学び、どのような課題があるのでしょうか。ドイツ在住ライターの中野吉之伴さんに、現地の歴史教育についてリポートしていただきました。
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日常生活の近いところに歴史を学ぶ機会が多くあるドイツ
ドイツの学校ではどのように歴史教育を受けているのでしょうか。
ドイツ人の95%が学校における歴史の授業を「重要」「すごく重要」と受け止めているというアンケート結果があります。そして「過去の歴史内容をそのまま受け止めるだけではなく、そこから自分で考える能力を身につけてほしい」という点を特に歴史授業に望んでいるそうです。
歴史を学ぶ機会として、日常生活に近いところからつながりを考えていくことは大切です。例えば僕が暮らすフライブルクには、かつてシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)のあった場所が「旧シナゴーグ広場」という地名として今に残っています。
フライブルクのシナゴーグは、ナチス・ドイツ政権による強制連行が行われる少し前の1938年11月9日から10日にかけて行われた「水晶の夜」(現在のドイツでは「迫害の夜」と呼ばれています)というユダヤ人を標的とした暴動によって放火され、焼失。昨年11月9日には追悼式が行われ、フライブルク市長らが献花しました。コロナ感染予防のため小さな式典となりましたが、それでも決して中止にしてはいけない行事だったと思います。
ここフライブルクでは11月9日とその前後が、過去の過ちに学び、思いを馳せる時期となっています。メディアでも過去の歴史を紐解き、犠牲者を悼む報道が数多く流れます。小学校4年生の次男もこのタイミングで第二次世界大戦やホロコースト(ナチス・ドイツ政権がユダヤ人などに対して行った大量虐殺)について学校で学んだそうです。
ドイツの多くの都市では「つまずきの石」と呼ばれる10センチメートル四方の小さな金属のプレートが道に埋め込まれています。これは、かつてそこに暮らしていたユダヤ人がホロコーストの犠牲になったことを記憶にとどめるためのものです。
この「つまずきの石」は珍しいものではなく、戦前からの市街地では少し探すだけで簡単に見つけることができます。身近な場所にいたはずの人が多数連れ去られ、生活が破壊されたことを思うといたたまれない気持ちになります。
過去の過ちは、なかったことにはできません。変えられない過去は忘れず、ごまかさず、静かに直視して二度と繰り返さないための努力をする。そのために何ができるのかを考える。決して簡単なことではありませんが、忘れないための努力を怠らず、これからの世代にも正しく伝えていかなければいけません。