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課題を抱えるドイツの歴史教育 “興味あり”の学生は56% 求められる学びのあり方とは
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歴史の知識が正しく伝わっていないという課題 保護者からは要望も
一方で、「歴史に興味を持っている」という学生は56%ほど。最近は子どもたちにその知識が正しく伝わっていない点も問題視されています。第二次世界大戦時の黒歴史であるアウシュビッツの強制収容所について知っている14歳以上の学生は59%にとどまったという統計も出ているそうです。
ドイツの学校内における取り組みは州ごとに違うので、地域によって歴史授業の頻度はさまざま。とはいえ、どんな地域の取り組みであっても最低限、学生時代に歴史に関して学べるようにしなければならないはず。
現役小学校教師で数々の著書を持つアルネ・ウルブリヒト氏は「『歴史からの学びは多いということを学ぶこと』が大切だ。歴史の授業は正しく育成された歴史教師によって行われることが重要だと思う。色鮮やかに、スリリングに行われる歴史の授業は現代社会における問題を考える上でも非常に有効な手段となり得る」と主張しています。
人間は自分が知らない世界の常識や習慣をうまく受け入れることができず、先入観で曲解してしまいがち。ネットに氾濫している間違った情報を簡単に信じてしまうケースも少なくありません。
社会的及び政治的問題に関する運用プロジェクトを開発する非営利団体「ケルバー財団」の教育部門長スベン・テッツラフ氏はこう話します。
「若い人は自分たちの生活について関係性を感じられたら、歴史にとても親しみを感じられるようになります。最近はデジタルメディアを利用したり、グループワークをしながら学んだりする形も多く用いられています。重要なのは知識を正しく伝えることと、アクティブに学ぶやり方のバランスです」
保護者の方からも「現代社会にどのように照らし合わすことができるかを伝えてほしい」という要望が教育サイドに上げられているそうです。それぞれの地域や国にどのような背景があり、どのような関係性から今の関係性が生まれたのか。そして、互いの誤解や不理解が原因でどんな混乱が起こり得るのか。これらを知り、そこから現代社会の問題点をディスカッションしていくという学びはこれからの時代、ますます必要になってくるのではないかと思います。
(中野 吉之伴)
中野 吉之伴(なかの・きちのすけ)
ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。同国での指導歴は20年以上。「SCフライブルク」U-15(15歳以下)チームで研修を積み、さまざまな年代とカテゴリーで監督を務める。執筆では現場経験を生かした論理的分析を得意とし、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「世界王者ドイツの育成メソッドに学ぶ サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン刊)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする 自主性・向上心・思いやりを育み、子どもが伸びるメソッド」(ナツメ社刊)がある。ウェブマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。