仕事・人生
猫は「シッポのある友達」 キャットシッターが心がける上でも下でもない関係性
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以前は東京でパン店を営んでいた岩崎華枝さん(※「崎」はたつざき)。猫の「ぽんさん」をはじめとするいくつかの出会いを経て、移住先の南房総市でキャットシッターとして起業しました。さまざまな分野で活躍する女性たちに、個性的な半生を語っていただく連載「私のビハインドストーリー」。今回の後編では、キャットシッターとしてのモットーや「猫を飼う」ではなく「猫と暮らす」という言葉を使う理由などについてお話を伺いました。
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移住先でキャットシッター開業も…1年はほとんど仕事にならず
南里秀子さんのキャットシッター養成講座を受講し、2018年7月に千葉県南房総市で「キャットシッターたまはな」を開業した岩崎さん。愛玩動物飼養管理士2級や動物取扱責任者など起業に必要な資格の取得や、起業に必要だった煩雑な事務手続きも「気持ちが盛り上がっていたので、何とかなるとやりきりました」と笑顔で振り返ります。
当時はすでに猫ブームの真っ只中。家で留守番する猫たちの面倒を見るキャットシッターは需要が増えているように思えましたが、開業当初は苦労も多かったそうです。
「開業から1年はほとんど仕事にはなりませんでした。キャットシッターという仕事があること自体が知られていなかったので、チラシを作って地域の動物病院やカフェなどに置いていただいたり、SNSで情報発信を始めたり。パン店で接客には慣れていたので、初めてのお店で『チラシを置いてください』と営業するのは苦ではありませんでした」
当初のサービス提供エリアは自宅のある南房総市と館山市の一部でしたが、あまりにも依頼がなかったため拡大。最終的には車移動を前提に南房総全域(南房総市と館山市、鴨川市、鋸南町)まで広げ、今では多くの常連客もできました。
猫に「すごく話しかけます」…コミュニケーションは大切に
キャットシッターとは、留守にする家のカギを預かり、お留守番をしている猫のお世話をするサービス。食事の用意やトイレの掃除に限らず、遊び相手をすることもあります。依頼主には猫の様子を写真に収め、留守番の状況を報告。岩崎さんのモットーは「猫さんが快適に過ごせるようなお手伝い」だそうです。
「猫さんは暑さ寒さの温度差に弱いので、室温には気を配りますね。慣れていればスキンシップをとったり遊んだりしますが、隠れてしまったりシャーシャー言ったりする時は、元気であることを確認して写真を撮ったら、そのままそっと見守ることもあります。
ただ、私は猫さんにすごく話しかけるので(笑)、顔は合わせなくても声はかけています。聞こえるように『お水飲んでね』とか『暖かい場所にいてね』とか。コミュニケーションは大切にしていますね」
岩崎さんにとっては、依頼主とのコミュニケーションも重要なポイント。大切な猫と家のカギを預かるため、訪問しての打ち合わせでは、猫も巻き込んだ会話でリラックスした雰囲気を作るそうです。
その一方で、以前に自身がキャットシッターというサービスを利用していた経験も踏まえながら、「堅苦しくなく、かといってフレンドリーになりすぎず、ある程度の距離感を保てるように」という目標を掲げます。
今年7月で5年目に突入する「キャットシッターたまはな」。岩崎さんにとってキャットシッターとは「仕事であり、でも仕事だけではなく楽しみであり、生活の一部」なのだそう。そして「私にとって、なくてはならないものかな」と微笑みます。
また猫とふれあう中で、自分も猫のために何か活動をしたいと思う人も多いでしょう。岩崎さんはまず、身近にある参加の機会からスタートすることを勧めます。
「まずはご自宅の猫さんを大事にすること。そして、日本全国にボランティア団体やシェルターがあるので、お金や物資を寄付する。または売り上げの一部が活動資金になるグッズを購入することなどで、気軽に始められると思います。ボランティアさんも常に人手不足なので、行けばわずかな時間でも歓迎されるはずですよ」