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トイレを何度も無心で流し続ける夫…鬱かと思いきや「男性更年期障害」に そのとき妻は
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“孫とのお出かけ”をエサに 病院へ連れ出すことに成功
そんなことがあってから、一馬さんと一緒にいるときは他に何かおかしいことはないか、注意してよく見るようにしたという陽子さん。おかしな行動をとるのは、トイレのときだけだったのですが、これまであまり言わなかった仕事の愚痴が増え、大好きだったドライブに行くことが減り、家でふさぎ込むことが増えたことに気づいたといいます。
「やっぱり鬱なのかも……と思い、夫に精神科の受診を勧めたのですが、夫からは『俺を病人扱いするな! ふざけるな!』と怒鳴られてしまいました。それでも不安で仕方なかったので娘に相談したところ、ネットでいろいろと調べてくれて、そこで『男性更年期障害』があるということを教えてくれました」
「しかし、頑なに嫌がる夫をどう病院に連れて行こうか悩んでいたところ、『精神科って言われると、どうしてもハードルが高いもの。泌尿器科の受診だったら、お父さんもあまり嫌がらないんじゃない?』と娘に言われ、娘と孫が病院に付き添ってくれることになりました。夫には、『午後は孫ちゃんと一緒に映画を観に行けるから! 検査だけでも受けてみてちょうだい……』と、必死に説得をし、やっとのことで夫の重い腰を上げさせることに成功しました」
泌尿器科受診すると、問診のほかにも血液検査など様々な検査行うことになりました。そして検査の結果、血中テストステロン値が低下していることがわかり、男性更年期の疑いが強いと医師から診断されました。
そして、「ホルモン補充療法」を行うことになり、しばらくは家で様子を見ることになった一馬さん。薬の効果か、治療に行って原因を知ることができたことによる安心感からか、トイレで水を流し続けるという異常行動は、今は収まっているといいます。
「夫の水を流し続ける奇行が続いたのは半年くらいの間でしたけど、本当に怖かったので、治ってよかったです。ジャーーージャーーーって水の音が聞こえるたびに、心臓がバクバクしていたので……私自身も鬱になりかけてたんだなって、そう思いました。夫が健康でいてくれることが、私自身の健康にもつながるんですよね。そんな当たり前のことに、夫の更年期で気づくことができました」
男性更年期は息が長いのが特徴とも だからこそ早めに症状に気付くのが大切
個人差はありますが、女性の更年期は閉経してから数年で、ホルモンの値が落ち着くと症状も落ち着いていくといいます。しかし、男性更年期は発症すると長く続くのが特徴のようです。「まだ若いから……」「男のくせに更年期なんて……」と症状を見逃してしまうと、メンタル面をやられ、鬱症状を引き起こしてしまうこともあるというので要注意。
一般的に、症状のチェックとして次のようなことが言われています。
・性欲が低下した。早朝勃起の回数が減少した
・総合的に元気がなくなってきた。調子が悪い日が増えた
・体力・持続力が低下した
・夜、眠れなくて起きてしまう
・イライラするようになった。神経質になった
・ひげの伸びが遅くなった
・集中力、判断力、記憶力が低下した
・ほてり、手足の冷え、筋肉や関節の痛みといった症状が出る
このような症状を男性側が訴えるようであれば、一度、更年期障害を疑ってみるのも、よいかもしれません。また、男性更年期障害では、太りやすくなるのも特徴のひとつだとされています。
現在は、男性更年期に対する治療方法の解明も進み、ホルモン補充療法や漢方薬の処方などの治療を行えるようになっているようですが、生活環境や生活習慣の改善が、男性更年期障害には欠かせないようです。つまり、なるべく早く身体の状態を知ることが大切。また、病院によっては、健康診断の際に、テストステロンを測定する検査をオプションで行うこともできると聞きます。そうした機会を利用するのもよさそうです。
陽子さん夫婦の場合は、今では笑い話となるような「トイレ」話だけで済みましたが、暴力的になったり、パニックを起こしてしまう男性もいるようです。あなた自身やご家族が健康であるためにも……夫の行動に不信を覚えたら、男性更年期を疑ってみるのもひとつの選択肢といえるかもしれません。
(和栗 恵)