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仕事・人生

“いただきます”の概念を世界へ 「食」と「命」をつなぐ家畜写真家のチャレンジ

公開日:  /  更新日:

著者:河野 正

SNSから発信する「“いただきます”を世界共通語へ」

 2020年3月から感染が拡大し、多くの人々を苦しめている新型コロナウイルス。瀧見さんも例外ではなく、いろんな計画とルーティンワークにひずみが生じてしまいました。コロナ以前は初めて訪れる牧場でも声をかけやすく、新規開拓ができましたが、コロナ後は撮影を断られるケースが多くなったそうです。同年に東京都内で開催予定だった初の写真展も、中止に追い込まれてしまいました。

 そんな折に思いついたアイデアが、撮り溜めておいた作品をフォトブックやポストカードにして発表すること。牧場などでの1回のお仕事で、おおよそ1000枚以上を撮影します。すでにフォトブック5冊を制作しましたが、莫大な数の中から厳選された出色の作品が並ぶのです。

瀧見さんがまとめたフォトブック【写真提供:瀧見明花里】
瀧見さんがまとめたフォトブック【写真提供:瀧見明花里】

 真夏を除き、5月から11月が撮影時期。瀧見さんのシーズン到来です。「今まで同じ牧場を頻繁に訪れることがなかったので、今年はまめに通って動物の成長を追ってみたい。今、行ってみたい北海道内の牧場が何か所かあります」と期待に胸を膨らませていた瀧見さん。近い将来の夢については「海外の人にも“いただきます”という言葉の意味や思いを知ってもらえるような活動を始めていきたいですね」と力強くも喜々とした表情で展望しました。

「世界に広く知ってもらうには、ニューヨークでの活動が適当なのかなと感じ、撮影に関しては牛の品種が豊富で動物もたくさんいるヨーロッパがいいのかな、なんて考えています」と具体案を示してくれました。

 家畜写真家としてのキャリアをスタートした時から瀧見さんは、「“いただきます”を世界共通語へ」というコンセプトを自身の下命とし、こつこつと仕事をこなしてきました。

 今のところ、「いただきます」の概念を世界中に伝搬させる具体的なプランは持ち合わせていませんが、極めて影響力の強いSNSの力を借りて攻めていく腹積もりでいるそう。今後はNFT(非代替性トークン)を利用して世界へのリーチを試みようとも考えているのだそうです。

「私は畜産の世界が大好きだし、家畜動物のお世話をしている方々も大好きです。この世界の素晴らしいところを発信しつつ、家畜動物と食の背景には命があることを伝えていきたい。ニュージーランドでの食卓で“いただきます”と発したら、牧場にいたヨーロッパの多くの人たちがこの言葉に興味を持ってくれたように、海外の人々に広く知ってもらえたら幸せです」

 食卓に供される肉と牧場で育った家畜動物、という関係がかけ離れた現代。瀧見さんは、肉には元々骨が付いていることが共通認識になる世の中を願っています。

◇瀧見明花里(たきみ・あかり)
1991年生まれ。北海道札幌市出身。大学卒業後、銀行員となったが1か月で退職し、ワーキングホリデーで1年3か月、ニュージーランドの牧場などで働く。そこで子牛の安楽死を目の当たりにし、動物と食と命について考える。帰国後は3つの異なる職種に従事したものの退職。2017年8月から、家畜写真家として全国各地の畜産家や酪農家を回って牛や豚、鶏を撮影。昨年まではAKAPPLE(アカップル)の名で活動していたが、今年から「タキミアカリ 家畜写真家 Artist」という肩書きで家畜動物とふれあっている。
インスタグラム:akapple29

(河野 正)