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韓国版「赤ちゃんポスト」の物語 すっぴんで熱演する42歳ペ・ドゥナ出演を決めた理由

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

42歳のペ・ドゥナがすっぴんで演じたガサツな刑事役

 ガサツで優しさを感じられないスジン刑事だが、魅力的だ。単純に女性だからというわけではない。それは何に対してもぶっきらぼうながら、決して高飛車ではなく、常に同じ目線で相手と接しているからだろう。

 スジン刑事役をペ・ドゥナが演じていることも大きい。現在42歳のペ・ドゥナは、この役をすっぴんで演じている。

 20歳の時、すっぴんで演じたポン・ジュノ監督の長編デビュー作『ほえる犬は噛まない』(2000)の主人公役では、半ば美を競い合うようであった韓国の女性俳優たちを震撼させた。あれから22年。役に憑依するような彼女の演じ方は変わらないが、特にスジン刑事のように正体の分かりづらい人物の内面を表すのは、よりうまくなっているように感じた。

 ペ・ドゥナの母親は舞台俳優のキム・ファヨン。2008年には母親の主演舞台「彼女が帰ってきた」のプロデューサーを務め、成功させた。1998年にモデルとして芸能活動デビューしたのは、ソウルの狎鴎亭(アックジョン)でスカウトされたのがきっかけだが、俳優へと目標を変えたのは彼女自身。「母親のおかげで幼い頃から演劇に接してきたから」だという。

 デビュー当時はヒット作に恵まれなかったが、インディーズ映画で確実に成果を上げ、大学内で演劇映画学科に転科するほど打ち込んだ(最終的には大学を受け直し、建国大学校芸術デザイン大学映画芸術学科を卒業)。その結果で得た演技的アプローチは、分析的に役を追求していくのではなく、白紙の状態で撮影に臨み、現場で得たインスピレーションによって演技を深めるというやり方だった。

ソン・ガンホとの共演が女性俳優で最多 そこで得たものとは

 スジン刑事は、子どもの母であるソヨンや、ブローカーのサンヒョン、ドンスらを追い、彼らの日常を目の当たりにすることで少しずつ考え方を変えていく。同じように、ペ・ドゥナ自身も構築するスジン像を、ソン・ガンホやカン・ドンウォン、IUとのやり取りの中で作り上げていったのではないか。

(c)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
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 ソン・ガンホとの共演は、『復讐者に憐れみを』(2002)、『グエムル-漢江の怪物-』(2006)など4作品目。女性俳優としては彼と一番共演が多いのだそう。21歳で会って以来、ソン・ガンホが魂を捧げるように一本一本作品に取り組む姿を見てきたことが、自分の財産になっていると語る。

 もう一人のブローカー役、カン・ドンウォンとは、『威風堂々な彼女』(2003)以来19年ぶり。少年のようだったカン・ドンウォンが子どもたちを引っ張るムードメーカー的なおじさんになっていたことに時の早さを感じたそう。