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韓国版「赤ちゃんポスト」の物語 すっぴんで熱演する42歳ペ・ドゥナ出演を決めた理由

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

出演理由は「監督からもらった幸せをお返ししたかった」

 ペ・ドゥナが演じる人物は、他人があえて見ないようにしているところを見据え、簡単に行動しにくいことをやり遂げる多様さを持つことが多い。現在、Netflixで配信中のSFシリーズ『静かなる海』のジアン博士役もそうだ。この作品は、同ジャンルのシリーズの中で世界第3位の視聴者数を記録したという。

 ただしペ・ドゥナは、どんなに製作費が大きく、スター俳優が揃った作品でも、「シナリオを読んで、役に没頭できないもの、自分を投影できないものは引き受けない」という。

 今では「自分に対して優しくしよう。自分が幸せな道を探そう」と思っているそうだが、若き日には「演技活動の原動力は多様な経験」、「難しいと思ったことでもぶつかって経験したことが私の武器」とも語っている。そうやって積み重ねてきたものが、スタッフや共演者の彼女への信頼のベースを作り、スジン刑事を作り上げる要素となった。

是枝監督と初めてタッグを組んだ『空気人形』で2009年のカンヌ国際映画祭へ。左からARATA(現在は井浦新)、是枝監督、ペ・ドゥナ、板尾創路【写真:Getty Images】
是枝監督と初めてタッグを組んだ『空気人形』で2009年のカンヌ国際映画祭へ。左からARATA(現在は井浦新)、是枝監督、ペ・ドゥナ、板尾創路【写真:Getty Images】

 今回は、かつて『空気人形』(2009)で組んだ是枝監督との再タッグ。その理由は、もちろんシナリオの面白さに他ならない。約6年前に受けたオファーに対し、日本語のシナリオまで取り寄せ、スジン刑事の語ろうとする言葉のニュアンスを見つめ続けたくらい、前向きに取り組んだという。

 その上でもう一つ理由を挙げている。「『空気人形』の時に、監督からもらった幸せをお返ししたかった」のだと。「人と社会を眺める視線、スタッフを尊重する姿を尊敬した」のだとペ・ドゥナは言う。

 彼女が尊敬したポイントこそ、是枝監督が映画を通して描きたかったことなのだと思う。そのため『ベイビー・ブローカー』の神髄を体現するキーマンは、たぶんペ・ドゥナなのだろう。

『ベイビー・ブローカー』6月24日(金)TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー配給:ギャガ(c)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

(関口 裕子)

関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。