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盲導犬候補の犬がたくさん経験した“初めて” 「繁華街での散歩」が大事な理由とは
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普通の散歩に見えるレクチャーに、盲導犬への一歩が隠れている
いよいよ最後は、今回の主要レクチャーでもある繁華街での散歩です。盲導犬はさまざまな場所に同行する存在。どんな環境でも一緒に歩いている人を意識しながら速度を合わせて歩くことを目指します。そのため、パピー時代にはおもちゃを使ったり、声かけをしたり、あえて緩急を付けて歩いたりして、犬の意識を人に向けさせます。
また交差点では信号の有無に関係なく、交差点の手前でストップをかけます。これは交差点にある段差で止まることにより、目の見えない人や見えにくい人に交差点の存在を教えるためですが、現段階では人間に意識を向けさせるため。「どっちに行くの?」と、犬の側から人間の指示を待つ訓練につながるそうです。
さて、肝心のジェニーはどうでしょうか。古澤さんは時にスタスタと、そしてゆっくりと、スピードに緩急を付けながら歩を進めました。その横にぴったりと付き、周囲に気を取られることなく歩くジェニー。本岡さんも「わずか6か月でここまで人間を意識しながら歩ける子はなかなかいません。ジェニーちゃん、すごいですね!」と絶賛です。
しかし本岡さんは、今回のレクチャーについて「完璧でなくても大丈夫」と語ります。まずは経験が大切なのだそうです。幼い頃に経験したことが未来につながっていく。これは私たち人間にも当てはまることかもしれません。
「パピーが1歳になるまでの間、こうしたさまざまな経験をし、多様な刺激を受けることでパピーにとっての『社会化』へとつながり、どんな場所でも落ち着いていられるようになります。ですから今回のレクチャーが完璧である必要はありません。こうした経験が大切なのです。
またレクチャーを通じて、一匹一匹の性格を把握します。犬も人間同様にそれぞれ性格が違うので、その性格の良い部分を伸ばしてあげられるよう、訓練を行うのです。ジェニーちゃんはどうやら、人間が大好きな様子ですね。少し頑固な面はありますが、『グッド!』と声をかけるとシッポを振って喜ぶし、とても頑張り屋さんなので、成長が楽しみです」
1時間30分のレクチャーはあっという間に終了。ジェニーは緊張からか少し疲れ気味でしたが、古澤さんに撫でられるとうれしそうにシッポをフリフリ。愛らしさ全開です。
「ジェニー、よく頑張ったね!」
大好きな古澤さんから受けた励ましの言葉を胸に、ジェニーはきっと将来、目の見えない人や見えにくい人の歩行をサポートする盲導犬に成長してくれることでしょう。
(和栗 恵)