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生見愛瑠の明るい演技が光る『モエカレはオレンジ色』 今こそ大人も観るべき理由とは

著者:関口 裕子

(c)2022「モエカレはオレンジ色」製作委員会 (c)玉島ノン/講談社
(c)2022「モエカレはオレンジ色」製作委員会 (c)玉島ノン/講談社

 少女雑誌のモデルとしてデビューした生見愛瑠(ぬくみ・める)さん。“名古屋で一番かわいい中学生”とも呼ばれた時代を経て、今年3月に20歳を迎えました。モデルとしてはすでに“超”が付くほどの人気ですが、近頃は演技へのチャレンジもスタート。人気漫画の実写化作品で、待望の映画デビューも果たしました。ここで見せている明るくはつらつとした演技は大きな見どころの一つですが、どうやら物語自体にも観客を癒やす力が潜んでいるようです。たかがラブストーリーと言うなかれ。気分が沈んでしまう事件が国内外で続いている今こそ、目に見える形で“気持ち”の応急手当をすることは大切です。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

 ◇ ◇ ◇

傷付いてしまった“気持ち”の応急手当 今こそ観るべき作品?

 気持ちが落ちてしまうことは誰にでもある。落ちてしまう原因は、自身に直結することだけではない。だから、ふと気づくと「滅入っている」なんてことは、いくらでもあるのだ。

 そんな時の回復方法として、知り合いの臨床心理士が教えてくれたのは「深呼吸をする。30秒くらいで終わることをする。自分を甘やかす」などのことだった。すべてすぐに肯定感や達成感を得られるもの。つまり何らかの事情で傷付いてしまった“気持ち”の応急処置だ。「頑張りすぎずに日々を生きていこう」ということなのだと思う。

 生見愛瑠が映画に初出演する『モエカレはオレンジ色』は、まさしくそういう需要に応える作品なのかもしれない。

『モエカレはオレンジ色』は、シャイでストイックな特別救助隊(消防士)の蛯原(岩本照)と、父親を亡くして転校し、友達がいない高校生の萌衣(生見愛瑠)の物語。ポジティブさを失っていた2人が、互いの言葉や存在を頼りに前向きに成長していく“胸キュン”ラブストーリーで、Snow Man岩本照の単独初主演作品でもある。

 消防士になって7年以上経つ大人と、高校生という2人だが、歳の差は気にならない。お互いに“落ちていた気持ちを引っ張り上げてもらった”と感じたことが恋の生まれるきっかけなので、彼らが相手を支えようとすればするほど観ているこちらも“癒やされる”という仕組みになっている。

格好つけることなく極めて明るく演じる…自分に近いキャスティング

 一歩踏み出すことを恐れていた萌衣は、「ビビってその場にいるだけじゃ、状況は変わらない」という蛯原の言葉に背中を押される。まず友達を作るところからスタートし、次に目標を作り、それを目指して努力を始める。若干殺伐とした現代だからというのもあるのかもしれないが、小さな前進を続ける萌衣を見ていると、深呼吸した後のような気分になる。

 生見はそんな萌衣を格好つけることなく、大きめの身体表現で極めて明るく演じる。テレビ番組で初めて彼女を見た時は、容姿や“めるる”というニックネームも相まってアイドルグループ出身なのだと思い込んでいた。

 そうではないと気づいたのは、彼女がドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」(2021・日本テレビ系)で主人公の恋に横恋慕するハチ子を演じた時。白杖を使うユキコ(杉咲花)に対する“懸命な”嫌がらせが、とても人間くさく感じられ、興味を持ったのだ。

 良い意味で、『モエカレはオレンジ色』の萌衣とは印象が違いすぎ、同一人物だと気づくまでに少し時間がかかった。そのくらい印象的だった。

 生見自身は「あまり悩まない」タイプなのだと言っている。もし気持ちがマイナスに引っ張られそうなら、「おいしいものを食べて、好きなことをして、眠る」のだとか。調べるほどに、彼女の生き方には心を軽くするヒントが詰まっているように感じた。萌衣役は、役=自分ともいえるようなキャスティングなのかもしれない。

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