カルチャー
生見愛瑠の明るい演技が光る『モエカレはオレンジ色』 今こそ大人も観るべき理由とは
公開日: / 更新日:
やりたいことを次々と実現させた“名古屋一かわいい中学生”
生見は2013年、「ニコ☆プチ」モデルオーディションでグランプリを受賞し、小学生向けファッション誌「ニコ☆プチ」(新潮社発行)でモデルとして活動を開始した。
13歳の時には、オーディションプロジェクト「TOKYO GIRLS AUDITION 2015」で「Popteen」賞と「Ray」賞を受賞。10代の女性向けファッション誌「Popteen」(角川春樹事務所発行)の専属モデルになり、“名古屋一かわいい中学生”との異名を取る。
すでに身長は160センチを超えており、2019年には同誌の「好きなモデル」アンケートで1位を獲得。同世代の少女が憧れるモデルへと成長していった生見を、当時の「Popteen」編集長は「中学生とは思えないオーラがある」と語っている。
生見はやりたいことをしっかりと言葉にする。「お芝居の仕事をやってみたい」と言い続けて、女子大生がおしゃれに目覚める青春ラブコメディドラマ「おしゃれの答えがわからない」(2021・日本テレビ系)で、ドラマ初出演ながら主演に抜擢。また「制服が着られるうちに青春映画をやってみたい」と言って、『モエカレはオレンジ色』への出演を実現させた。
心に秘めていてもやりたいことは叶わない。常に「こんなことがやりたいです」と言葉にするよう心がけているのだそう。「うまくいかないかもしれないけれど諦める必要はない。興味を持てることがあれば、全力でやった方が絶対楽しい」と。
「半端じゃない多幸感があった」と観客に言わせる作品
16歳の時に、「女子中・高生の3人に1人が見ている」といわれる恋愛リアリティショー「太陽とオオカミくんには騙されない シーズン4」(2018・AbemaTV)にも出演。生見の見せた恋模様が「切なすぎる」とティーンエイジャーの間で話題になった。
でも活動的なタイプと見えて、実はインドア派。デザイン講師をしていた祖母の影響で、ミシンを踏んで洋服を作ったり、編み物をしたりすることが大好きなのだそう。「作りたくなったら、すぐに作り始める」。そういう意味では「活動的」だという。
「仕事が楽しく、プライベートの時間はいらないくらいずっとやっていたい」というだけあって、かなり多忙そうではある。すごいと思うのは、それにもかかわらずしっかりと美容に時間をかけていること。特に、美しさに定評のある髪のケアには時間をかけており、細かいこだわりもあるという。
表に出る仕事だからといって、すべて他者が面倒を見てくれるわけではない。当日のヘアメイクだけではいかんともしがたい髪や肌のケアは、日々の努力の賜物だ。疲れ果ててメイクも落とさずに寝てしまう己と比べてはいけないが、そういう地道な努力を“楽しめる”ことも才能なのだろう。
『モエカレはオレンジ色』を“胸キュンだけではない作品”として成立させようとした村上正典監督の意図を感じつつ、肯定的な気持ちで映画館を出た。上映されている映画館には、平日の昼間にもかかわらず、多くの観客がいた。
観にきた理由も、鑑賞後の感想もそれぞれ異なるだろうが、そこで話を伺った方1人の言葉が強く印象に残った。「半端じゃない多幸感がありました」。同時に「今こんな世界だからこそ」と言っているようにも感じた。いずれにしても、“深呼吸”の他にそう思える存在があるのは大切なことだと思う。
『モエカレはオレンジ色』全国公開中 配給:松竹株式会社 (c)2022「モエカレはオレンジ色」製作委員会 (c)玉島ノン/講談社
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。