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夏休みの子どものクラブ活動 練習に力を入れる日本 休むことに集中するドイツ

公開日:  /  更新日:

著者:中野 吉之伴

「休む」よりも「思いっきり遊ぶ」機会と時間が重要

 冒頭で触れた通り、ドイツでは基本的に夏休み中のクラブ活動はなし。そのため、試合も大会もありません。

 一方で、日本だと夏に試合のスケジュールが入ったりします。そこで「好成績を挙げたい!」と思うと、ますます休むに休めなくなってしまうでしょう。スポーツに限らず、塾の夏期講習や何らかの課外活動で日本の子どもたちはとにかく忙しそうです。ただでさえ普段から忙しいのに、これだと夏休みでも一向に休める時間が取れない。

「夏休みにどれだけ心身ともに追い込めるかが大切だ!」と本気で思い込んで、本気で追い込んだとします。しかし、そのストレスや負荷というのは、子どもたちが納得して消化し、回復して、それ以前よりも強くなれるようにと正しい理論のもとで調整されたものでしょうか?

 休むことは悪いことでも何でもないです。やればやるほど体が強くなるということはありません。むしろ休みなく連日ハードなトレーニングをすればするほど、体は弱くなり、怪我をしやすくなり、頭や心も鈍くなっていきます。

 とはいえ、実際に休むとなると「何もしちゃダメ」とか「何をしたら良いか分からない」となってしまうかもしれません。そのため、育成年代の子どもたちにとっては「休む」というよりも、「思いっきり遊ぶ」機会と時間を取れるようにした方が良いと思われます。

 いきなり「夏に2週間丸々お休み」というと抵抗がまだまだ強いかもしれませんし、家にいられるといろいろと親が困るという側面もあるかもしれません。それなら2連休、3連休を何度か取り入れるという形にすると良いでしょう。

 正しく休み、心から遊べる機会をバランス良く取ることは、心身が最適に成長していくための大事な条件。そうやって子どもたちを十分に回復させられる配慮ができるといいですね。

(中野 吉之伴)

中野 吉之伴(なかの・きちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。同国での指導歴は20年以上。「SCフライブルク」U-15(15歳以下)チームで研修を積み、さまざまな年代とカテゴリーで監督を務める。執筆では現場経験を生かした論理的分析を得意とし、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「世界王者ドイツの育成メソッドに学ぶ サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン刊)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする 自主性・向上心・思いやりを育み、子どもが伸びるメソッド」(ナツメ社刊)がある。ウェブマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。