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斎藤佑樹「見返りを求めない人生でありたい」 “邪心のない”合気道に関心

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

斎藤佑樹さん【写真:荒川祐史】
斎藤佑樹さん【写真:荒川祐史】

 甲子園出場時に「ハンカチ王子」として一世を風靡し、大学卒業後はプロ野球の北海道日本ハムファイターズに入団した斎藤佑樹さん。昨年10月に現役引退を発表し、現在は「株式会社斎藤佑樹」の取締役として“野球の未来づくり”に関する活動を展開中です。あらゆる分野で自分らしく活動する人たちが、生き方のヒントを得た本について語るこの連載。今回は「野球以外のスポーツを勉強したい」と思った時に出会った、合気道に関する一冊をご紹介しましょう。斎藤さんはなぜ合気道に興味を持ったのか? そこにはやはり、野球との関係もあったようです。

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合気道に目覚めたきっかけは早大OBでもある広岡達朗さん

「合気道――稽古とこころ」(内外出版社刊)は、引退後、野球以外のスポーツを勉強したいと思う中で出会った本です。

「合気道――稽古とこころ」(植芝守央著、内外出版社刊)
「合気道――稽古とこころ」(植芝守央著、内外出版社刊)

 元々合気道に興味を持っていたところ、植芝さんを紹介してくださる方がいたので、早朝稽古を見学させていただきました。実際に触れてみると合気道は本当に深く、さらに興味を持って、この本を読むに至りました。

 合気道に興味を持つきっかけは、早稲田大学時代にOBの広岡達朗(元読売ジャイアンツ)さんから合気道を用いたスローイングを教えていただいたことです。広岡さんがボールを床に向けて投げるとボールが尋常じゃなく跳ね返る。でも僕がボールを叩き付けてもまったく跳ねない。不思議に思っていると、合気道を応用していると教えてくれました。

 合気道の動きは、流れの中で完成します。相手の力を受け入れ、それを流れに変えて技をかける。だから無駄な力を使う必要はないし、使う力自体も相手の力を借りるわけです。この流れの中にある動きの理屈は、理解できたら野球だけでなく、どんなスポーツにも応用できると思いました。

どんなにすごい人でも心に迷いはある…勇気付けられた気づき

 植芝さんの道場を訪ねた時、道着を着た皆さんが正座をして挨拶し、ピリッとした空気の中で合気道に取り組まれていました。

 その気の張り方がとても心地よく、それが新しい人生をスタートさせようとしている自分の気持ちにフィットしたんです。このくらいいろいろなことに気を配っていくべきなのだろうと感じました。

 植芝さんには安心させてもらうこともありました。この本の121ページに、「人生の中で、社会生活の中で様々なことが起こり、仕事や家庭などの事情で気持ちの浮き沈み、理性を保てないような時もあるでしょう」「それでも稽古を通じて、苦しい時も自己を律して真心を持ち続ける強さをもった人になっていって欲しいと願っています」というすごく素敵な一節があります。

 僕が安心したポイントは、合気道をこんなに極めた人も気持ちの浮き沈みを感じることがあるということ。野球をやっていた時、僕も気持ちが揺れることはたくさんありました。でもそれは僕だけじゃなかった。こんなにすごい人でも心に迷いがあると知って共感しました。