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藤井聡太三冠を目指して 親が知っておきたい「日本文化」としての将棋の素晴らしい側面

公開日:  /  更新日:

著者:真田 圭一

最年少で三冠に輝いた藤井聡太棋士。多方面で活躍【写真:Getty Images】
最年少で三冠に輝いた藤井聡太棋士。多方面で活躍【写真:Getty Images】

 将棋の藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖・19)の大活躍で、我が子にも頭を使う将棋を習わせれば藤井三冠のように頭が良くなるのではないか、あわよくばプロ棋士を目指してほしい、と考える親もいるのではないか。確かに、将棋は脳トレになりそうだし、好きなことが職業になるのは理想的に思える。しかし、実利的なメリットだけではなく、将棋を習うことで身につけられること、学べることがあるという。プロ棋士の真田圭一八段(48)に“将棋道”ともいえる将棋の魅力を聞いた。

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子どもと将棋を指す際、親にとっての鉄則は「勝たないこと」

 藤井聡太三冠の大活躍で、将棋を習う子どもたちが増えています。棋士としては喜ばしいことで、多くの方に将棋に接してほしいと願っています。

 将棋は音楽でいう「絶対音感」同様、接するのは早いに越したことはありません。5~6歳ぐらいでルールを覚えるのが理想的です。ただ、小学生のうちなら、どの年齢でも吸収、上達は早いです。大事なことは一つだけ。無理強いしないこと。将棋が嫌になってはすべてが台無しだからです。

 私自身、2人の子の親で、小学5年の長男と小学3年の長女がいますが、ルールを教えただけで無理強いはしていません。妻も元女流棋士(真田彩子女流三段、旧姓・古河)ですが、2人で話し合い、そのような教育方針を取っています。

 将棋の世界でプロを目指すのは、本当に過酷な道程であることが身にしみていて、藤井くんのような天才は、プロ棋士の夫婦が必死になっても意図的に作れるものではないとよく分かっているからです。結果、子どもたちは普通の小学生らしく、兄妹ともにゲームといえば携帯ゲーム機に熱中する日々で、将棋はそれぞれマイペースに接している感じです。

 しかし、もし子どもの興味が将棋に向いたら、その瞬間に「鉄は熱いうちに打て」で、熱が冷めない環境作りをする。そして、もし親子で対局することがあれば、親にとっての鉄則は「勝たないこと」だと思っています。勝ちたい場合は9回負けてから1回勝つ。将棋というゲームは「勝ってますます強くなる」ゲームです。たくさん勝たせて勝たせすぎることはありません。

 ちなみに、私の場合は小学1年、6歳の時に祖父宅にあった将棋盤に興味を持ったことがきっかけです。祖父がプレゼントしてくれた簡易な将棋盤と駒を使って将棋を覚えました。今思えば、祖父は初孫だった私と将棋を指したかったのだと思います。覚えてすぐ将棋に熱中し、12歳でプロの修行機関・奨励会に入り、19歳でプロに。以来、30年近くプロ棋士として生きてきました。