カルチャー
斎藤佑樹「なぜ自分は幸せな野球人生を送れたのか」 幼児教育に興味を抱いた理由とは
公開日: / 更新日:
僕の中での倉橋さんは漫画「ONE PIECE」のルフィ
この書籍を通じて倉橋惣三さんの存在を知ることができたのは、これから幼児教育を勉強していく上で一つ大きな成果になったんじゃないかと思っています。
倉橋さんは、意外とキュートな方。非常に勉強熱心ですが、運動神経があまり良くないなどコンプレックスもあった。それをプラスに変えていくことも含めて、全体として自分を作っていければいいんだと、とても広い考え方をされる。そこに強い魅力を感じます。
僕の中での倉橋さんは、漫画「ONE PIECE」に出てくるルフィ(モンキー・D・ルフィ)なんですよ(笑)。無邪気で、物事を達成するためには固定概念なんて捨ててしまおうとするところとか。
倉橋さんがこれまでの常識にとらわれずに教育を変えていこうとする部分は、漫画を読んでいるのかと思うくらいに面白かったです。
常識にとらわれない教育者の姿から恩師・栗山英樹さんを想起
常識にとらわれない、むしろ常識を疑うという部分は、北海道日本ハムファイターズの監督だった栗山英樹さんも倉橋さんと似ています。
現役時代、栗山監督には技術よりも人としてのあり方について、よくご指導いただきました。「結果は出ないかもしれないけど、佑樹が今やっていることは絶対間違っていない。苦しいかもしれないけれど、たくさんの人にそれを見せる責任がある。だから今はつらいかもしれないけど、頑張れ」と。
これって指導者の立場ではなかなか言えないこと。指導者の仕事とは、本来、「結果」を出すことだから。でもそうではなく、「やっているその姿を周りの人にちゃんと見せなさい」という。
そう言われた僕は頑張るわけで、結局ゴールは一緒なのですが、栗山監督は選手によってスイッチを入れるためのアプローチを変えていた。そこが幼児教育を日本に持ってくるために固定概念を捨てて、新しいことに挑戦された倉橋さんと似ているなと。
スポーツは、肉体を鍛えるだけでは強くなりません。気持ちの部分も大切。でも、そこは忘れられがちです。心が伴わないと結果を得ることはできないことを教え、補ってくださった指導者の方々の存在は、僕にとってとてもありがたかった。この本は、そういう枠にとらわれない教育の考え方を僕に教えてくれました。
大正期から昭和にかけて活躍した教育者の倉橋惣三。遺された日記や貴重な資料を基にその生涯を綴った一冊。幼児教育の改革を手がけ、上皇陛下の幼少期に教育係を務める一方、親として我が子との関係に悩む姿も描かれている。
1988年6月6日生まれ、群馬県出身。第88回全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)で投手として活躍し、早稲田実業高校を優勝に導く。ポケットに入れたハンカチで汗を拭う姿が多くの人の印象に残り、「ハンカチ王子」の愛称で親しまれた。早稲田大学への進学後も好成績を残し、2010年にはドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに入団。2021年10月に引退を発表し、12月1日付で「野球の未来づくり」に関する活動を行うとして「株式会社斎藤佑樹」を設立。現在は同社の代表取締役として活動している。
(関口 裕子)