カルチャー
ブラピ主演『ブレット・トレイン』 米ティーンのアイドルが“大人の俳優”になる過程とは
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子役が成長する姿を作品で見続けると、いつの間にか強い親近感を抱いていることがあります。「ずいぶんと大きくなったな」などとしみじみしてしまう人も多いでしょう。米国にも観客がそうした気持ちになる元子役が大勢います。中でも7月に23歳を迎えたジョーイ・キングは幼い頃から主演を演じ、10代後半でティーンのアイドルになったこともあって、ひときわ注目度が高い俳優です。そんな彼女が新たに選んだ作品は、実力もクセもたっぷりの名俳優たちが乗り込んだ“超高速列車”でした。より“大人のハリウッド俳優”になろうとする彼女の過程も、作品の隠れた見所のようです。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。
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ブラピ演じる殺し屋が超高速列車で京都へ そこに乗り合わせた謎の少女
「大きくなったら何になるの?」。多くの人が幼少期に受けるこの質問。聞く方はたぶんなりたいものを厳密に聞き出したいわけではなく、答える方も真剣にそれになりたいというより、目の前にある憧れを口にしただけ。この質問はファンタジーの世界を楽しむやり取りなのだ。
だがこれが「なりたくないもの」を問うものだとしたら? たぶん答えはそんなファンタジーでは済まないかもしれない。
ブラッド・ピット主演、デヴィッド・リーチ監督、伊坂幸太郎原作の、東京―京都間を走る超高速列車(ブレット・トレイン)を舞台にしたミステリー・アクション映画『ブレット・トレイン』には、なりたくないものを静かに語る少女が登場する。
少女がなりたくないものとしてあげるのは、「誰かの未来の妻」であり、「誰かの母」。彼女がなりたいのは自分自身。意見を言うことも、行動することも許されない、「脇役はもう嫌」なのであり、自分自身として主役になりたいのだと言い切る。
少女の名はプリンス。プリンセスではなく、プリンスだ。英国訛りで話すプリンスは、か弱く、かわいらしい容姿を最大限に活かすミニスカートのアイビールックで、超高速列車に乗り込む。プリンスが何者なのかは誰も知らない。
『ブレット・トレイン』の物語はこうだ。運の悪い殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)が、東京発の超高速列車内でブリーフケースを盗み、次の駅で降りるという“簡単”なミッションを請ける。
だが物事はそううまくは運ばない。レディバグは、腕利きの殺し屋コンビ、タンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)からブリーフケースを奪うも、それを阻止する謎の人々に阻まれ、下車できない。
乗り込んできたのは殺し屋たち。復讐心に燃えるメキシコの殺し屋ウルフ(バッド・バニー)、乗務員に扮した毒使いの暗殺者ホーネット(ザジー・ビーツ)、息子を人質に取られた元殺し屋キムラ(アンドリュー・小路)、剣の達人エルダー(真田広之)らは、何者かが筋書きしたストーリーに従い、レディバグとともに超高速列車で京都を目指す。