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100万円入る財布に変えて文学賞受賞の開運経験も 節約投資ネタ満載の「財布は踊る」
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「三千円」でも好評だった節約や投資などのノウハウや情報は健在
この作品では冒頭から、浴室のシャワーを最初に出す際、温度が上がるまでに「どのくらいの水が流れているのでしょう?」と問いかけがあります。平均的なマンションで「六リットルです」とした上で、「この六リットルを何に使うか考えてみませんか?」という話が続くのです。
また、節約メニューや服や化粧品の調達法、奨学金返済にまつわる裏ワザ、年に数か月だけ働いて稼ぐエアコン取り付け業者の仕事、古い家を買って自分で直して貸す不動産投資術、さらに株や金融の話なども登場します。
「ネットなどに転がっているようなお金、お財布関係の小ネタは、日々チェックしています。見つけた時に面白い、書きたいと思っても、鵜呑みにできないものもある。奨学金の裏ワザは使えないこともないけど、あまり広めたりはできないかな(笑)。リボ払いの世界や、株の信用取引とか、知らないより知っていた方がいいという注意喚起の意味合いもありますね。本の内容のおかげでお金の問題を回避していただけたらうれしいです」
ふとしたことからみづほが手がけることになる不動産投資では、「埼玉には東京に通える範囲でも、古かったりすると数百万円で買える家がある(本作では210万円)」と目からウロコの視点も与えてくれます。
30~50代女性が読者層の中心という原田さんですが、本作では読者層に広がりも出ているようです。
「今回はもう少し若い方にも読んでいただいているみたい。先日はラジオ局で40代の男性から『刺さりました』との感想をいただきました。意外と30~40代の男性でお金に敏感になっている方にも読んでいただけるのでしょうか」
財布については、人生を導くとか運をもたらすといった考え方もあります。本作にも「年収は財布の(値段の)二百倍」とあり、「本には書きませんでしたが、お財布風水では、財布に入れるクレジットカード類は8、10、12枚がいいといわれていて、私も意識しています」。
原田さんにも、財布にまつわるエピソードがあります。2007年のすばる文学賞選考会当日のことです。
「それまでは小銭入れに毛が生えたような小さい財布を使っていたのですが、占いのライターをやっている人に、今日選考会だと言ったら、賞金(100万円)が入るくらいの長財布にした方がいいと言われたんです。その時は何でも掴みたかったので、デパートに行って100万円が入るような厚みのある長財布を買ったら、受賞しました」
コロナ禍でお金のことを考え始めた人多数?
また原田さんは自身の著作を通じて、お金を取り巻く社会の風潮がコロナ禍で変わってきていると感じているそうです。
「コロナ禍の自粛生活であまりお金を使わなかったので、まとめて投資しようとか、皆さん落ち着いてお金のことを考え始めたのだと思います。2018年春に出た『三千円』の単行本は2万部くらい。それが昨年夏、文庫になって売れていることも象徴していますね。
読者の感想でも、お金のことは後回しにしてきたけど、本を読んで反省し、今からやってみようかという方が多い。日本人って、お金のことを考えるのは恥ずかしいという面があったけど、もう少し積極的になってもいいという感じになってきています」
最後に「Hint-Pot」読者に向けた、ちょっとした節約のアドバイスをいただきました。
「節約とかお金の話って本当は2、3行で終わっちゃうんです。支出を見直して余ったものを投資に回す、というだけ。無理に投資をする必要もなく、スマートフォンの料金プランや会社を変えて支出を見直すという簡単な節約方法もあります。細かいところでは、野菜、食材は使い切ること。食材を余らせて捨てちゃうのはもったいないし、そこをこまめにやるだけでも結構違ってくると思います。頑張ってください」
1970年、神奈川県生まれ。作家、シナリオライター。2005年、「リトルプリンセス二号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。2007年、「はじまらないティータイム」(集英社刊)で第31回すばる文学賞受賞。著書に、「三千円の使いかた」(中央公論新社刊)、「一橋桐子(76)の犯罪日記」(徳間書店刊)、「古本食堂」(角川春樹事務所刊)、「ランチ酒」(祥伝社刊)、「彼女の家計簿」(光文社刊)など多数。
(Hint-Pot編集部)