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「収穫の時期」に多忙を極める柴咲コウ 「ガリレオ」最新作にも見える今後の姿とは
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14歳で芸能界入り 大ブレイクを迎えた20代
芸能の世界に入ったのは16歳の時。14歳の時にスカウトされたことによるもので、当時、まったく芸能界に興味はなかったが、「経済的な理由でこの業界に入った」と語っている。
そんな柴咲が注目されたのは、19歳の時に公開された深作欣二監督の『バトル・ロワイアル』(2000)。戦争に駆り出され、正義も意義もなく殺し合いをしなければいけなくなった戦場の兵士の様子を、中学3年生たちのバトル・ロワイアルに重ねた怪作だ。
もう一つは助演賞を総なめにした『GO』(2001)。偶然、町で柴咲とすれ違った原作者の金城一紀が、小説とはイメージが異なるものの主人公が恋する桜井役は「ぜひ柴咲で」とキャスティングを希望した。
「何事も客観視するタイプ」である柴咲にとっても、桜井役は本来の自分とは異なった。“かわいらしさ”を前面に出すことは柴咲にとって「さらけ出したみたいで恥ずかしかった」ことになるが、「演技に対する欲が出てきた」きっかけともなった。本作で共演した、ものづくりの感受性に長けた窪塚洋介や原作者の金城、そして行定勲監督の影響もあったのかもしれない。
その後も、木村拓哉と共演のドラマ「GOOD LUCK!!」(2003・TBS)、吉岡秀隆と共演の「Dr.コトー診療所」(2003・CX系)、妻夫木聡と共演の「オレンジデイズ」(2004・TBS)、映画『黄泉がえり』(2003)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)、『メゾン・ド・ヒミコ』(2005)、『日本沈没』『県庁の星』(2006)、『どろろ』(2007)、『舞妓Haaaan!!!』(2007)でヒロインを演じ、どの作品も大ヒットさせた。
30代もヒット作続々 大河「直虎」でも強い印象を残す
強いだけではなく、人間性を掘り下げられる人物を演じたいと歩んできた20代の柴咲。整備士を演じた「GOOD LUCK!!」やハイパーレスキュー隊員を演じた『日本沈没』、タイトルロールを演じた『どろろ』はパワフルだが、そこに面白みや人間性、リアリティなどを出すための試行錯誤もした。
30代になっても、木村拓哉と共演の「安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~」(2013・TBS)、小栗旬と共演の「信長協奏曲」(2014・CX系)など数字を取れるヒロインとしての歩みは続く。同時に、主演作も増えていく。
二宮和也と共演した『大奥』(2010)は若干異なるが、女将軍にリアルさを与えた柴咲の居住まいが印象深かった。まぎれもない主演作は、同世代の女性を演じた『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』(2012)や大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017・NHK)など。
それぞれ強い印象を残したが、特筆したいのはやはり直虎。直虎は、まだ徳川が女系を城主にできないと定める前の戦国時代、領民を率い、家を守り、井伊家の礎を築いた人物だ。柴咲は、領民により良い未来をもたらすために、「損得勘定ではなく、純粋な思いで動いた直虎に魅かれた」と言っている。「今は思いだけで生きていくことが難しい時代だから」と。
40代で独立 物事を切り開こうとしながらも他者をサポートする姿勢に
柴咲の独立は、40代に入る直前。事業を始めたのは「私がやるべき使命があると思ったから」だと言い、サステイナブルをモットーに選んだ。また事業の一つにファッションを選んだのも「ファッションは社会を意識する手段」だからだという。
現在、北海道にも自宅をかまえ、東京と行き来する二重生活を送っている。何をやっているのかと聞かれると「普通に生活をしている」と答えるのだそう。起きて、掃除して、買い物して、ごはんを作って、食べて、眠る。そういう当たり前の生活を送っていると言うと、珍しがられるのだとも。
たぶん彼女は、“思いだけでは生きられない現代”についてじっくりと考えているのではないか。思いをとても必要なものだと考えるから。とはいえ、この仕事量ではゆっくりしている時間もなかなか取れないのではないかと思うが。
『沈黙のパレード』もそうだが、今年の柴咲の出演作品は、何事かをやり遂げようとする人物をサポートする役が多い。偶然ではあるだろうが、今の柴咲なら実生活においてもその役割を買って出そうな気がする。
時と状況によって、物事を切り開いていくことも、そういう人物をサポートすることも厭わないような考え方を身につけた40代の柴咲。そんな柴咲コウの選ぶ作品に興味が尽きない。
『沈黙のパレード』全国東宝系にてロードショー公開中 配給:東宝
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。