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日本とは異なる英国の教育…ラブライフアドバイザーが選んだ「疑似体験感がすごい一冊」

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

教えてくれた人:OliviA

ラブライフアドバイザーのOliviAさん【写真提供:OliviA】
ラブライフアドバイザーのOliviAさん【写真提供:OliviA】

「ダイバーシティ」という言葉を耳にするようになってから、しばらく経ちました。今後も世界では重要なキーワードとされていますが、実際の生活で「なぜ重要なのか」を意識する瞬間はどの程度あるでしょうか。その重要性を理解するには、常に視野を広げて、積極的に考えることが必要かもしれません。「Hint-Pot」の好評連載、性に関するお悩み相談を担当するラブライフアドバイザーのOliviA(オリビア)さんは、1冊の本によって「多文化社会を肌で感じることができた」と語ります。あらゆる分野で自分らしく活動する人たちが、生き方のヒントを得た本について語るこの連載。今回は英国の公立中学に通う男の子を描いたノンフィクションです。

 ◇ ◇ ◇

英国という多文化社会を肌で感じる一冊

 疑似体験感がすごい本、それが「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社刊)です。

 例えば、英国の学園ドラマを観ていると、いろいろな立場の人が人種やルーツによってさまざまにグループ分けされているのが見て取れます。でもそれぞれの詳細な日常までは描かれない。この本から伝わってくるのはまさにその部分。自分が家族と英国で生活していて、学校から帰ってきた息子から今日どんなことをしたのかを教えてもらっているような、そんな疑似体験感があるのです。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」文庫版(ブレイディみかこ著/新潮社刊)
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」文庫版(ブレイディみかこ著/新潮社刊)

 日本に住んでいると、どうしても似たような価値観、文化的背景を持っている人たちとばかり意見交換してしまい、身近に異文化があることを感じにくいように思います。

 でもこの本には、文化的背景や生活スタイル、宗教や所得も違う人々がミックスされるとどうなるのかが書かれている。英国という多文化社会を肌で感じることができるわけです。

中学生に「エンパシーとは何か」を教える英国

 この本の存在を知ったのはSNSです。「5章 誰かの靴を履いてみること」を含むいくつかの章がSNSで無料公開されていて、非常に興味深い内容だったため購入しました。

 この章で書かれていたのは、英国の公立中学校で導入されている「シチズンシップ・エデュケーション」について。このカリキュラムは「政治や社会の問題を批評的に探究し、エビデンスを見極め、ディベートし、根拠ある主張を行うためのスキルと知識を生徒たちに授ける」ものなのだそうです。

 みかこさんがその授業の試験ではどんな問題が出るのか息子さんに尋ねると、大人でも答えに窮する「エンパシーとは何か」などの問題であったことが伝えられます。

 エンパシーとは、人の気持ちを思いやるという意味。多文化が入り混じり、混乱する世界を乗り越えるにはそれこそが重要といえるでしょう。違う文化的背景や意見を持つ人の気持ちを想像するエンパシーをどうとらえるのかを問う考え方に、みかこさんだけでなく、私も興味を持ちました。

 日本の中学生もこんな教育を受けていたら、今とはまったく異なる価値観を持つことになったかもしれません。生きるために大切な考え方をきちんと自分の言葉で答えられるようにする教育と、受験のために必要な教科書的な勉強をする教育では、国際社会における未来で大きな差が出るような気もします。

 そういう日本とは異なる英国の教育がとても興味深く、それを中学生の言葉で表現しているのもまた分かりやすいポイントだと思います。

 また、この本が好きな理由には、みかこさんが日本生まれなので分かりやすく身近に感じられること、パンク好きの母ちゃんであることも関係しているような気がします。他の国から見たら日本はどう見えるのだろうという点も気になりました。