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カルチャー

日本とは異なる英国の教育…ラブライフアドバイザーが選んだ「疑似体験感がすごい一冊」

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

教えてくれた人:OliviA

共存していくために、さまざまな違いを知って受け入れること

 私がこの本に強く惹き付けられた理由には、大学時代の留学経験と、現在“性”についての仕事をしていることも関係しているのかもしれません。

 私が大学3年生の時に短期留学したのはオーストラリアです。オーストラリアも多文化社会で、同じ土地に住んでいても文化的背景が違い、異なる多様な歴史を持っていることがしばしば。そんな人々が共存していくためには、さまざまな違いを知り、受け入れていかなければならない。この本を読んだことでそう考えていた日々がよみがえりました。

 今の仕事にしている“性”に関することも、宗教や住んでいる国や地域で、倫理感や価値観が異なるため、世界共通の正解はないという状況です。そのため常に意見の違いや多文化を意識していますので、より興味を持ったのかもしれません。

教育や多文化といったどの観点から入っても興味深い内容

さまざまな背景を持つ子どもたち。ともに学ぶことの可能性とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】
さまざまな背景を持つ子どもたち。ともに学ぶことの可能性とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

 読んでいて印象深かったエピソードはもう一つあります。それも「5章」で、季節外れの大雪で行き場がなくなったホームレスに、近隣の住民がボランティアで居場所や食料、防寒具などを用意した時の話です。

 みかこさんと一緒に活動に参加した息子さんは、「今年は緊縮財政で自治体がホームレスを支援できない」という話を聞き、「緊縮や税金とは何か?」「なぜ民間人がボランティアをするのか?」を大人たちから学びます。

 この答えも、自治体の仕組みとエンパシーという「シチズンシップ・エデュケーション」における学びにつながるもの。具体的なエピソードと重ねて書かれていたので、より印象に残りました。

 英国の多文化社会を生活レベルで感じたい方、物の見方を広げたい方、子どもの教育のあり方を考えたい方、海外での生活に憧れている方にもおすすめです。教育や多文化といったどの観点から入っても、面白くお読みいただけると思います。

◇「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」文庫版(ブレイディみかこ著/新潮社刊)
英イングランド南東部の港町・ブライトンで「元・底辺中学」に通う「ぼく」。パンクな母ちゃんがその姿を綴った等身大ノンフィクション。毎日出版文化賞特別賞やYahoo!ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞など多数を受賞し、大きな反響を呼んだ。

(関口 裕子)

OliviA(オリビア)

1980年生まれ。ラブライフアドバイザー(R)、アロマセラピスト、日本性科学会 会員。学生時代に「女性の性」をテーマに卒業論文を執筆したことをきっかけに、2007年より性に関する総合アドバイザーとして本格的に活動を開始。台湾でも書籍を出版するなど、日本のみならず海外にも活動の幅を広げ、多方面で「女性のセクシュアルウェルネス」「コミュニケーションを重視した性生活」の提案を行っている。近著に「セックスが本当に気持ち良くなるLOVEもみ」(日本文芸社)など。