Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

海外ニュース

ダイアナ元妃 「90年代、その存在感は尋常じゃなかった」―没後22年に想うこと

公開日:  /  更新日:

著者:森 昌利

ヘンリー王子の運動会で靴を脱いで裸足で全力疾走

 ダイアナ元妃が、ピープルズ・プリンセス(民衆のプリンセス)と呼ばれたのは、ともすれば権威的で雲の上の存在になりがちな王室にいて、無邪気と言ってもいいほど、自分の感情に素直に行動したからだろう。そしてその感情の源には常に大きな愛と人をびっくりさせるようなユーモアに溢れていた。

 そんなダイアナ元妃を象徴する有名な写真が2枚ある。

 1枚目は1991年の写真。当時6歳だったヘンリー王子の運動会に訪れたダイアナ妃が、母親競争で全力疾走している姿が映っている。

 もちろん、ダイアナ元妃がこの競争に加わるなんて、本人も含めて、誰も予想していなかったに違いない。それはこの写真を見れば明らかだ。ダイアナ妃の装いはシルバーのスカートにブラックのミニタリー風のジャケットを羽織ったファッショナブルなスタイル。とてもじゃないが、徒競走をするような格好ではない。そしてなんと靴を脱ぎ捨て、裸足で走っているのだ。

 もちろんこの写真に世界中が仰天した。しかし同時に、“もしも私がここでこの格好で走ったらどうなるかしら?”という、なんとも茶目っ気たっぷりで愉快な思考と、その瞬間を純粋に楽しみたいというダイアナ元妃のポジティブな気質がこの写真に表れ、世界中の人々が頬を緩ませ、魅了された。

息子達とボート遊びでびしょ濡れ 王室の「しきたり」に挑戦した育児

 そして2枚目は、1993年、ロンドン近郊サリー州にある遊園地「ソープ・パーク」でふたりの息子達とボートに乗り、一緒にびしょ濡れになって笑っている写真である。

 基本的にこの写真が出現するまでの王室の親子関係は、権威と儀礼に支配されたイメージで、一般からすると、非常に冷たいものだった。

 我が妻によると、エリザベス女王がチャールズ皇太子と親子らしいスキンシップを見せている写真は“一切見たことがない”という。そのチャールズ皇太子は子ども時代を厳格極まりない全寮制の学校で過ごし、かなり過酷な体験をしている。ダイアナ元妃はそんな王室のしきたりに挑戦するかのように、ふたりの息子と遊び、抱きしめ、開けっ広げで全く邪気のない愛で包んで育てた。