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“有言実行”で主役掴んだ元宝塚宙組男役・悠未ひろさん 衝撃の大失敗で受けた“愛のムチ”

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

宝塚在籍時の思い出を語った悠未ひろさん【写真:荒川祐史】
宝塚在籍時の思い出を語った悠未ひろさん【写真:荒川祐史】

 在団当時の宝塚最長身、179センチの男役(現在は公称180センチ)として活躍し、今年で芸能生活25周年を迎えた元宙組の悠未ひろさん。コンプレックスを自信に変えるまでには、さまざまな苦労があったそうです。宝塚歌劇団の世界をOGたちの視点からクローズアップする「Spirit of タカラヅカ」の今回は、悠未ひろさんの第2回。長身ゆえの苦労や先輩方を仰天させた“有言実行”など、「根拠のない自信」を胸に突き進んだ日々のエピソードについてお話を伺いました。聞き手は宝塚をこよなく愛するフリーアナウンサーの竹山マユミさんです。

 ◇ ◇ ◇

高身長が目立たないような研究の日々 それでも「厳しい規則も楽しんでいた」

竹山マユミさん(以下竹山):在籍当時、宝塚史上ナンバー1という長身を生かした悠未さんのダンスは、多くのファンを魅了しました。とはいえ、音楽学校時代はいろいろなことで目立ってしまったのではないですか。

悠未ひろさん(以下悠未):そうですね。予科時代(2年制の宝塚音楽学校では1年生にあたる)は特に、目に留まりたくない時に目立ってしまっていました。背が高い私は、90度の体を曲げる挨拶も、小さい人がやるよりも少し大げさな感じになってしまいましたし、どうしても“見下ろしている”ようになってしまうのです。だから、表情などを鏡で研究して、予科生らしく見えるようにいろいろ研究もしました。

竹山:背が高い人ならではの悩みですよね。かなり苦労されたのではないですか。

悠未:でも、私自身が“宝塚ファン”だったので、「こういうことができる」という喜びの方が大きかったのです。予科時代、つらくて「もう実家に帰りたい」と泣き出す同期もいましたが、私は励ます側。ホームシックはほぼありませんでした。憧れの宝塚の規則に従って動いている、そんな自分がうれしくて、厳しい規則すらも楽しんでいました。

竹山:芸事の授業など大変なことも多かったと思うのですが……。

悠未:私は芸能系の習い事をあまりやってこなかったから、できないことも多かったです。でも、私が憧れていた真矢みき(現在は真矢ミキ)さんの自叙伝で、成績はあまり良くなかったとおっしゃっていたエピソードを思い出し、成績がすべてではないなんて思っていました。もちろん落ち込むこともありましたよ。でもつらい時は、教室の窓から見える劇団の建物を見ながら「あそこに行くんだ!」と誓っていました。青春でしたね。

背の高さで衣装部泣かせ…長身の生徒が増えて状況が変化

竹山:入団後は組回り(正式配属前に各組での出演を経験すること)を経て、1998年設立の宙組に配属されましたね。背の高い方がたくさんいらっしゃった印象が強い組です。

悠未:初代トップスターの姿月あさとさん(73期生)だけでなく、2番手や3番手の方も背が高かったので、“大きい宙組”という雰囲気でした。身長が高めの人を集めるような噂も少し耳にしていましたから、宙組に配属が決まり「やっぱり」と思ったのを覚えています。でもいざ入ってみると、やはりずば抜けて大きかったです。

竹山:当時は公称179センチでした。

悠未:トップの御三方は背が高かったのですが、間の上級生にも180センチに届きそうな方はいらっしゃらず、舞台で私が後ろにいても頭一つ出てしまうという感じでした。それも“悪目立ち”するから、「もっと後ろに行って」とか、「真ん中にいるとバランスが悪いから、端に行ってください」と言われたこともありました。

竹山:早く真ん中に、という思いが強くなりますよね。

悠未:悔しかったですね……。他にも、背が高すぎたから衣装がなかったんですよ。“つんつるてん”のものばかりでした。衣装部さん泣かせでしたが、「ごめん。もう衣装がないからここに生地足すわ」とパンツの裾に生地を足してもらうなど、たくさんお世話になりました。それに靴も、私のサイズは26.0センチだったのですが、当時は24.5センチから25.0センチぐらいまでしかありませんでした。

竹山:どうされたのですか。

悠未:研1(入団1年目)の時は指を丸めて履いていました。だから指の色が変わったりしてしまって……。それでも踊らなくてはいけないので、よく転んでいました。つらいけど仕方がないと思っていたのですが、自前でオーダーメイドする方法を上級生から教えていただき、そこからは自分に合うものやヒールの低い靴を作って履いていました。

竹山:思い切り演技やダンスに集中されるためにはその方がいいですものね。

悠未:でも実はその後、劇団の方で大きなサイズも作ってくれるようになりました。私の2学年下に同じくらいの背丈の下級生が入団して、これからは大きい人が増えてきそうだから、徐々に衣装も靴も作っていこうという方針になったようで。私が最初に困っていたことも少しずつ改善されました。